2019年12月

執筆者:桜井 悌司 氏
(日本ブラジル中央協会 顧問)

 

 日本ブラジル中央協会のホームページの「連載エッセイーブラジルを理解するために」コーナーは2015年秋に細々と開始されたが、この1月に、200本に達した。

 

昔、1990年代後半にイタリアのミラノにある在イタリア日本人商工会議所の事務局長・理事をジェトロ所長に兼務して、3年以上にわたって務めた。海外の日本人商工会議所はほとんどいずれも改善すべきことは多い。そこでミラノにある主要な外国商工会議所を訪ね、彼らの活動ぶりを取材し、レポートにまとめた。様々な課題があったが、その一つとして会員企業に対するサービスの充実という点に着目した。例えば、会員対象のセミナーを例にとると、年間2回くらいしかやっていなかった。そこで初年度は、16回、次年度は20回のセミナーを行った。2年経った頃、会員企業から、「最近商工会議所の活動が変わりましたね」と言われた。8~10倍のエネルギーをかけた努力を2年間、続けた結果、ようやく変化に気がついてくれたのだ。まさにチリ(セミナーの内容は、それぞれ素晴らしいもので、決してチリではなかったが)も積もって山となったのだ。この連載エッセイも積もり積もって小山になった。

 

連載エッセイのコーナーを始めた時は、なかなか書いてやろうという会員や外部の人は現れなかった。そこで、私が過去のジェトロ人生で書き留めていたメモを元に書き始めた。私が200本中60本以上を執筆しているのは、喜々として執筆したのではなく、書き手がなかなか見つからなかったからである、それでもこつこつやって来て、200本にもなると割合、形が整ってくるものである。

 

連載開始後1年経った2016年12月頃から、協会の理事、文化交流委員会の仲間、ブラジル駐在時代の友人、関西外国語大学時代の友人、ジェトロの仲間が積極的に協力してくれるようになった。2年経った2017年10月には、70本に達した。私の考えは、協会の文化交流委員会の名前で投稿コーナーを運営しているからには、まずスポーツや文化交流に関わるエッセイ・レポートを増やすことであった。この点、柔道、剣道、空手、野球、長唄、映画、日本語教育、留学問題、スラムのオーケストラ等々の分野で39本を揃えることができた。昨年10月末にお亡くなりになったサンパウロ在住の関根隆範さんには、日本とブラジルの柔道交流につき3回にわたって、力作を執筆していただいた。ここに故人のご冥福をお祈りしたい。

 

第2点は、駐在生活やビジネスに役立つ情報の提供にも力を入れた。「駐在お役立ち情報」、「ブラジルでのビジネスお役立ち情報」の2つのコーナーを充実させた結果、合計60本になった。その中には、ブラジル銀行日本支店開設記、ブラジルでビジネスを成功させるための経営戦略等貴重な情報が含まれている。駐在生活にもすぐに役立つものも多く入っている。第3点は、ブラジルを理解するためには、「国民性理解」、「歴史・地理」の理解が必要であるが、アマゾン、国旗・州旗、田所清克先生の力作等60本近くに達した。4番目に重視したのは、各種提言やHOW TOものの掲載である。これは主として、私が執筆したものであるが、「フェスチヷル・ド・ジャポンのこと」、「在ブラジル県人会について考えたこと」、「ブラジルの輸出振興機関について考える」、「在サンパウロの外国商工会議所の活動」等は、具体的にどうすれば、改善が図れるかについて提言している。県人会についてのレポートは、「サンパウ新聞」(2019年1月に廃刊)と「ニッケイ新聞」にも同時に転載されたことも記憶に残る。日本ブラジル中央協会としては、今後このような分野に力を入れていただければと考えている。

 

3年目に入ると、ブラジル在住の友人である伊豆山康夫氏、日下野良武氏、高木和博氏、塚本恭子氏、丹羽義和氏、山岸照明氏、山下日彬氏などからも複数回の興味ある内容の寄稿を受けることができた。この頃から、コンスタントに月間5本の寄稿があり、事務局の業務量も考慮し、月半ばに2本、月末に3本の掲載が可能になった。

 

4年目に入ると、協会の理事や文化交流委員会の方々が積極的に投稿してくれるようになった。加えて、ポルトガル通訳ガイド試験受験や大学院修士号取得の奮戦記という面白い内容の原稿も出てきた。150本と180本を超えたところで、原稿の分類を試みた。読者が自分の関心記事を探せるようにするためである。そうこうしているうちに、今年の夏に、会員の服部則夫さんから寄稿したいという嬉しい手紙を頂戴た。旧国鉄から海外鉄道技術協力協会に出向され、ブラジルの鉄道技術の向上に貢献されたエンジニアで、原稿もブラジルの鉄道唱歌というオリジナルなものであった。ようやく、寄稿してみようという人がでてきたのである。考えてみれば、ほとんどすべての人々は、何らかの貴重な経験をされており、それらをまとめておくことは、必ず人のお役に立つものである。今後、連載エッセイコーナーに寄稿してやろうというボランテイアの出現を期待したい。

 

私は、200本の達成を機に、連載エッセイコーナーの担当を退くことになるが、今までに執筆いただいた方々に深謝するとともに、今後ますます皆様方の投稿を期待したい。また日本ブラジル中央協会には、中央という名前にふさわしく、全国のブラジル関連団体のリーダーとしての役割を果たすこと、会員間の親睦のみならず、日本とブラジル、日本とラテンアメリカの経済交流に真に役立つ業務を積極的に展開されることを期待したい。ありがとうございました。

2019年12月執筆