山口達朗
(ブラジル中央開発 取締役)
中央開発㈱のブラジルでの取り組み
弊社のブラジル事業の歴史は、1997 年からサンパウロにおいて円借款事業のコンサルティング業務を開始したことに始まる。業務の拡大にともない、2003 年にサンパウロに現地法人を設立した。以来、弊社は、ブラジルなど南米各国において主に水や農業分野のコンサルティング業務を行ってきている。
中央開発㈱の海外展開とブラジル
総合建設コンサルタント会社である中央開発㈱は1948 年に設立され、地質調査や環境調査をはじめとして土木分野の様々な計画・設計、メンテナンスなどに業務範囲を拡げてきている。最近では、特に、大水深の海域での地質調査(傾動自在型試錐工法)、再生可能エネルギー開発、自然災害の調査や早期警報システム開発、地域振興や観光に関する計画づくりなどで、独自の技術による営業活動を行っている。単なる営利追求ではなく、様々な開発の中核になるようにとの思いが社名の由来である。
海外事業については、1973 年に海外事業部を設置し、海外では、中南米、東南アジア、アフリカなどで、農業開発、上下水道や河川改修などのインフラ整備などの様々なプロジェクトを展開してきた。最近では、上水道の補修と管理の向上を行う無収水のプロジェクトや、中南米での日系農業者の交流・ビジネス開拓、フードバリューチェーンなどのプロジェクトを行っている。また、独自技術である斜面崩壊を検知するセンサーを用いて、中国、オーストラリア、スリランカ、インド、ブータンなどで土砂災害の防災・減災のトータルサポートに貢献しており、ブラジルでも、後述するリアルタイム遠隔自動監視による斜面モニタリングを予定している。
弊社の海外事業部には、学生時代にブラジルで一年間留学研修をした経験を持つ筆者を含めてブラジルや南米諸国との縁が長い社員が少なくなく、ブラジルへの強い思い入れを感じる。弊社の瀨古一郎社長も、リオデジャネイロで国際コンサルティング・エンジニア連盟(FIDIC)の総会に参加した際に、サンパウロにも立ち寄り、サンパウロ市内上空からプロジェクトサイトの視察を行っている。
日系社会との携わり
農林水産省の「中南米日系農業者等との連携交流・ビジネス創出委託事業」の受託者として、弊社はブラジルをはじめとする中南米の日系農業者との連携の強化、研修や交流事業、日本国内の地方企業などと日系農業者とのビジネス交流の促進、日本との交流や協力の強化を図るための会合の開催などを通じて、日本と中南米の農業・食産業関係者の連携強化、日本企業の中南米進出、日本の農林水産物や食品の輸出促進に取り組んでいる。若手の日系農業者を対象とした交流会議の開催や、日系農業者団体女性部の日本への招へいなども行っている。日系農業者と日本の地方企業などとのビジネス創出のためのビジネスマッチング・セミナーの開催も行っており、日本ブラジル中央協会様にもWEBサイトを通じての事業の幅広い周知などのご協力をいただいている。
また、一昨年度、環境省の「中南米地域における環境保護に関する国際広報業務」では、サンパウロ日本祭りへの環境省ブースの出展支援を行っており、こうした業務を通じて、これからもブラジルの日系社会との連携を深めてゆきたい。
事業の現状や将来の展望
独立行政法人国際協力機構(JICA)による「2019 年度第2 回中小企業・SDGs ビジネス支援事業-案件化調査-」(中堅企業枠)に応募し、弊社が提案するブラジルにおける「土砂災害等早期警報システムにかかる案件化調査」が採択された。
弊社が、東京大学大学院などとの技術提携によって開発し、SIP(内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム」)を通じて発展・向上させてきた傾斜センサーによる斜面崩壊早期警報システムなどの防災モニタリングシステムをブラジルの防災分野の開発課題の解決に貢献するビジネスとして事業化を図り、ブラジルの防災の課題解決に貢献したい。弊社の傾斜センサーを活用した斜面崩壊早期警報システム「感太郎」は、高精度・小型・省電力・低コストで、設置が簡単で斜面のモニタリングが可能である。
今後は、ブラジルにおいて長年かけて培ってきた幅広いネットワークを活かしながら、地域社会に「技術をもって貢献する」ことをモットーに活動し、安全・安心でより豊かな生活を求める人々にとって、あるいは、より活発な社会経済活動を目指す企業や機関にとって、オンリーワンのコンサルタントとなれるように技術開発と事業領域の拡大を図っていくつもりである。
最後に、この原稿を書いている時点では、新型コロナウイルス(COVID-19)が甚大な影響をもたらしておりますが、一日も早い終息を心より願っております。