菊元 崇(協会理事)
カンピーナス市と聞いて、あぁ、あの町ですね、と即答される方がどれくらいいらっしゃるのかは不明だが、カンピーナス市は、南米最大の都市サンパウロから約 100㎞北西に位置し、人口約 120万人を擁するサンパウロ州で3番目に大きい都市である。標高約700m に位置し、カレンダーの区分的には四季があるが、夏(12月から3月)でも冬(6月から9月)でも最高気温が 32、3 度まで上がる日もあれば、25 度に届かない日もあり、日によってばらつきがある。一日の中でも朝晩は涼しく、昼間は暑い日もあり、「一日の中で四季がある」と言われるほどである。
また、カンピーナスはポルトガル語で草地を意味し、もともとは多くの川に沿って、低地の植生に覆われたなだらかに起伏する丘が点在する土地であったが、その名の由来通り、現在でも高層ビルが立ち並ぶ市街地にはたくさんの木々が植えられており、緑豊かな町並みを保持している。そして、カンピーナスの市章と市旗には、神話上の鳥であるフェニックスが用いられているが、これは、黄熱病の大流行により、市民の約3割が死亡したが劇的な復興を見せ、「不死鳥の町」として知られるようになったことによる。
カンピーナスと日本の結びつきというところで行くと、「東山農場(Fazenda Tozan do Brasil)」が挙げられるだろう。東山農場は、カンピーナス市街地から 10㎞ばかりの場所に、1927 年に創設され、広大な敷地でコーヒーを栽培するとともに、日本酒、醤油、みりんなどを製造しており、私もカンピーナス赴任中には市内のスーパーマーケットで、日本酒や醤油が購入できることにずいぶんと助けられた記憶がある。2005 年に放映されたNHK 放送 80 周年記念ドラマ「ハルとナツ」のセットにもなった場所であり、赴任中に1回しか見学できず、約1世紀前の雰囲気に十分に思いを馳せることができなかったのは今となっては少し心残りでもある。
また、カンピーナス郊外には、州立カンピーナス大学(UNICAMP)があり、同大学はブラジルを代表する南米でもトップクラスの名門校である。UNICAMP はキャンパスの敷地は広く、敷地内には病院、銀行、郵便局など生活に必要な設備が整っているのは、地図で見て何となくは認識していたが、入口の前を通ったときには、もちろん全容は見えないものの改めて一つの町のようだと思ったものである。