西野和博
(山九ブラジル㈱社長)
ブラジル進出と会社設立
1970 年に成立したブラジルのメジン政権は国家鉄鋼計画を策定し、当社は第3期計画(2500 万㌧体制)に伴う鉄鋼業の発展に対応するため、1971 年にサンパウロ駐在員事務所を設立。続いて翌年1月にウジミナス製鉄所3号高炉および CSN3号高炉の建設工事受注を機に、現地法人・山九ブラジル機工有限会社を設立した。
山九ブラジル 海外事業の基盤確立
ウジミナス製鉄所3号高炉建設にあたり高炉建設の技術とノウハウを、山九ブラジル機工部門を通じて提供し、1974 年の大晦日に工事は完成した。山九ブラジルはこの建設工事を機に製鉄所の構内物流分野に進出し、鉄鋼業界の成長とともに業容を拡大して事業基盤を構築した。
当時の中村公三社長は「それぞれの国の経済発展に寄与するために、できるだけ現地法人化しなければならない。」と述べ、海外拠点の現地法人化を進めるとともにその充実・強化に取り組んだ。
現地法人を真に定着化するためには、工事完成後も継続して整備・物流を含め常例作業を獲得し、経営基盤を確立する必要があった。当初ブラジル事業は機工分野のみに留まっていたため、中村社長自らチームを率いてブラジルに渡り、1ケ月余りに及ぶ集中的な現地調査等を実施しつつ、ウジミナス製鉄所の構内常例作業獲得を目指した。
1976 年4月より、ウジミナス製鉄所構内作業の受注を機に本社機能をベロオリゾンテに移し、現在に至っている。当時の従業員数は 2100 名を超え、イパチンガには従業員の親睦と健康管理の為に「中村公三記念体育館」を建設し、地域社会にも貢献している。
1980 年以降は施工実績を重ね、特に 1999 年以降の高炉改修工事3件は山九と山九ブラジルで共同施工し、南米初のブロック工法を実施した。
山九ロジスティクスブラジル有限会社の設立
1993 年に山九ブラジルの子会社として山九ロジスティクスブラジル有限会社(SLOG)を設立し、日系企業を中心に国際物流事業としての輸出入通関業務・倉庫保管業務・フォワーダー業務を自社体制で提供している。
2013 年8月、SLOG はヘゼンジ地区に物流センターを開設し、リオデジャネイロ港を窓口とする国外調達品のフォワーディング業務から JIT 配送まで、一連の業務を可能とする自社サービス体制を整えた。また、山九の国際複合輸送部・山九USA とともにメキシコからブラジルへの調達物流サービスを構築し、2013 年後半から自動車部品メーカーへの一貫輸送サービス提供を開始した。
2013 年 FIFA コンフェデレーションズカップブラジル大会(ワールドカップ・プレ大会)において、競技用施設の輸送~設置までを受注し、その後の本大会、2016 年のオリンピックにおいても設営作業に参画することができた。
ブラジル人社員の育成と幹部登用
企業の将来創りは人創りがベースである。お客様窓口の全てがブラジル人であると言っても過言でない当社にとって、ブラジル人幹部の育成は過去からの大きな課題であった。
2006 年以降、各拠点トップにブラジル人を起用し始め、2014 年に全拠点トップをブラジル人とするとともに、当社の経営基盤である「構内事業」全般を管掌するブラジル人役員も誕生し、ナショナル社員の経営参加という新たな一歩を踏み出している。山九からの出向者である日本人が経営層を占めるという、長きにわたり存在したナショナル社員にとっての「ガラスの天井」を取り払うまでに至り、ナショナル社員の今後の益々の士気向上と成長が期待できる。
また、技能系社員に関しても、技能教育・安全教育、文化活動などに精力的に取組み、今後もこのブラジルにおいて山九グループの基本理念である「人を大切にする」ことを実践しながら「人を育てる企業、山九ブラジル」で有り続けるよう取り組んでいく。