高嶋尚生

 ブラジル独立運動の英雄チラデンテス(1746.8.16 〜1792.4.21)はブラジル人なら誰でも知っている。彼が処刑された4 月21 日は「チラデンテスの日」という国民の祝日となっている。本名はジョアキン・ジョゼ・ダ・シウバ・シャビエールだが、歯医者だったのでポルトガル語で「歯を抜く」と言う意味の「チラデンテス」というあだ名がついた。国民的英雄であったが故にその名にちなんだ「チラデンテス通り」や「チラデンテス広場」はブラジル全国至る所にある。建物ではリオデジャネイロ州の州都のセントロにある「チラデンテス宮殿」(現在の州議会議事堂)が有名だ。
一方、本家のチラデンテスは、ミナスジェライス州の州都ベロオリゾンテから約200㎞、車で3 時間のところにある。標高927m の高原の古い町だが、彼の生誕地に近かったため没後約100 年経ってその功績を称えチラデンテスと改名された。観光客は17 世紀のゴールドラッシュで建設された歴史的都市でユネスコの世界遺産のオウロプレットを訪れてもチラデンテスは遠いのであまり行かない。人口1 万人の小さな田舎町だが、実は、質が高く洗練されたレストランがいっぱいあるグルメシティーである。
1997 年から毎年8月または9 月に文化と食のフェスティバル(FestivalCultura e Gastronomia deTiradentes)が開催され、ブラジルはもとより国外からも多くの人が押しかける。またセンスが良く素敵なポウザーダ(小規模ホテル)もいっぱいある。古くて趣のある木製家具がおかれた部屋にいると気分が落ち着く。窓から昔のまま保存されているコロニアル様式の街並みも見える。小さな石畳の道を歩いていくと古い教会がある。白壁で窓枠を青や黄色に塗られた歴史的建築が随所に観られる。週末や連休には家族連れ(どちらかと言えば富裕層の家族連れ)が訪れ、お気に入りのポウザーダに滞在する。町なかのレストランに繰り出して美味しい食事を満喫している。チラデンテスは小さな町なので見どころを全て歩いて回ることができる。ミナスジェライス州に行ったら、少し足を伸ばして訪れる価値は大ありの場所!
高原の自然、古い町並みの雰囲気、食を楽しんで、ゆっくりと流れる時間を味わっていただきたい。