深沢正雪
(ブラジル日報編集長)

「邦字紙を看取ってくれ」と頼み込まれ
1998 年、私は群馬県大泉町で工場労働をしながらブラジル人コミュニティのルポルタージュをしていた。そんなある日の早朝、92 年から3年間務めていたサンパウロ市にある邦字紙の編集長から突然「もう一度戻って邦字紙を看取ってくれないか」という国際電話がかかってきた。
「数年で潰れてもおかしくない。100 周年(2008年)までもたないかも。でも我々移民が生きた記録を日本語で書き残してくれ」と切実な口調で言われた。何を血迷ったか「数年なら」と思った私は、もう一度ブラジルに戻る決心をした。この一件がなければ、今頃日本で暮らしていたに違いない。
いざブラジルへ戻って国際電話をしてきた本人に、なぜ自分にかけてきたのかと問うと「ああ、あのときは酔っ払っていたからよく覚えてないな」と頭を掻いていた。まあそんなものだろうと呆れ、半ば納得した。ブラジルではそんなことで人生がよく左右される。
以来20 数年、ずっと邦字紙で働き続けている。98 年から始まったニッケイ新聞(高木ラウル社長)の読者は移民が中心で、その高齢化により経営難に陥っていたが、不思議なことに持ちこたえていた。だが昨今のパンデミックで広告収入が絶たれ、21年暮れにドトメをさされた。

ポルトガル語媒体を大黒柱に育てる
22 年1月に始まったブラジル日報協会(林隆春会長、蛯原忠男理事長)には日本語新聞「ブラジル日報」とポルトガル語新聞「NipponJa」の2紙がある。
日本語媒体としては移民読者から、ネットを通して読んでくれる日本側読者に重心を移しつつ、姉妹紙であるポルトガル語媒体NipponJa を大黒柱に育て上げるとの方針に転換を図った。ポルトガル語媒体としては漫画やアニメなどの日本文化好きのブラジル人若者に支持される存在になろうと試みている。
世界に20 紙以上の日本語新聞があるが、ほとんどが駐在員と家族および長期在住者向けのフリーペーパーだ。我々のような移民向け購読紙から、在住国住民向けの現地語媒体に転換を遂げて成功した例は多くない。
「ブラジルの生の現地情報を、現地から日本語で日本の日本人に伝える」ことと「日本の生の情報をポルトガル語でブラジル人に伝える」ことを同時に行うのは大変難しい試みだ。だが日本とブラジル相互の情報交流を盛んにすることで、間違いなく日伯関係の絆を強められる事業だと確信している。
NipponJa 紙(https://www.nipponja.com.br/) は昨年、日本のエンタメサイト大手ナタリーと提携し、Jpop 関連記事を翻訳して伝える事業も始めた。いずれ漫画アニメ分野の記事の翻訳にも手を広げる予定だ。ブラジル人の若者読者にアピールすると考えている。企業PR や新サービスや新商品をポルトガル語で広報する際に活用してほしい。特定の地域や年齢層に限定したSNS マーケティングも実施している。

日本側購読者に重きを置くネット情報紙に
日本語のブラジル日報(https://www.brasilnippou.com/)では、企業や金融関係者、外務省、県庁などの国際交流部署担当者、南米関係の研究者などを始め、一般に読まれるように工夫をしている最中だ。今年からブラジル日本商工会議所と連携して、会員企業を2言語で紹介する記事を出す企画も進行中だ。
当地の祝祭日以外は、基本的には週5回配信。『印刷版』を基本に、それとまったく同じ内容の『PDF 版』、サイトだけの有料記事やPDF 版が見られて、過去記事検索もできる『Web版会員』もある。
このWeb 版会員になって過去記事を検索することで、業界動向を過去にさかのぼって調べられる他、有名な人なら名前検索をかけて調べることもできる。
印刷版やPDF 版の内容としては1面がブラジルの政治や経済、2面が日系社会の動き。「海岸山脈コラム」では、分かりづらい政治や経済に関する詳しい解説を配信している。毎日約10 本の最新記事がある。
中面には移民の俳壇や歌壇、読者投稿もある。これだけの頻度でブラジルや南米に関する日本語情報を発信しているところは他にない。
それに加えて、サイトのみの「市況」記事では毎日の株式市場など金融の動き、同じくサイトのみの政治や経済に関する有料記事も毎日2本ほど掲載される。
これらの記事をチェックするには、日本時間で朝9時ごろ(ブラジル時間夜9時ごろ)に発信されるメルマガ「無料朝刊サービス」(https://www.brasilnippou.com/mailmagazine) を購読するのが一番効率的だ。同メルマガには最新記事のリンクが全てあるからだ。
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