執筆者:藤沢 圭子 氏(HN: Shiomin)

 

多言語間には残念な音の一致や意味の不一致が付き物ですが、日本語とポルトガル語の間にも、耳を疑うような「言語間の同音異義語」が存在します。

今回は、日本語の単語や短文で、ポルトガル語圏へ赴いた際にうっかり公の場で言ってしまうと、周りの現地人に「ギョッ!」とされてしまい兼ねないものをいくつかご紹介します。

「ここ」

「ここ」、「そこ」、「あそこ」の「ここ」は、ポルトガル語スピーカーの耳には「う〇ち」に聞こえてしまいます。

そう。「大便」のことではありますが、表現としては「大便」でも「大きい方」でもなく、「う〇ち」というのが一番しっくりいく表現です。

ある時、出張で訪れていたアフリカポルトガル語圏のカーボベルデ共和国での現場作業中、「もうちょっと後ろね!」と指示されて数歩下がったところで、つい「ここ?」と指さして聞いてしまったところ、傍らにいた現地人スタッフが、目にも止まらぬ勢いでピョンッ!とのけぞったということがありました。

日本語の「ここ」の意味を説明したところ、そのスタッフは「犬のでも落ちていたのかと思ってしまった!」と、気まずそうに笑いました…。笑

だからといって、日本語で会話する際に「ここ」という単語を使わないのは至難の業なわけでして…。

旅先の街を日本人同士のグループで歩いている時など、少し後ろから来ている人に大声で、「このあいだ言っていた店って、ここ?!」などと訊くことって、結構ありがちですよね…。そんな時は、可能であれば、「このあいだ言っていたのって、この店?!」といった表現に置き換えるようにしましょう。

「そんなこと言われても、とっさにはねぇ…」

なんですけどね…。(笑)


「ピンとくる」、「ピンと張る」など

要は「ピンと」がマズい単語です。「ピントを合わせる」というのなら、イントネーション的にそのようには聞こえないのですけどね…。

その意味は男性器を指す言葉の中でも一番ポピュラーなもので、日本語では「お」を付けて言うことの多い、「ん」で終わる「あの言葉」に相当します。

私は日本語で、「さっき聞いていてピンと来たんですが…」などと言ってしまうクセがあるようで、ついついポルトガル語圏にいても日本人と話しているときに、こういった表現が口を付いて出てしまうことがあるのですが、その都度「あ、又やっちゃった…!」と反省することになります…。苦笑


「いい気分だ!」

これは、そもそも普段の会話でこのような表現を単独で使うようなことはないでしょうし、イントネーションもちょっと違うので、単なるネタに過ぎないと言われればそれまでですが、「いい気分だ!」という日本語は、ポルトガル語スピーカーには、「あちゃーっ!なんというお尻だ!(Ih, que bunda!)という感嘆文に聞こえる可能性があります。

よって、言う機会はないと思いますが、ご存じのとおり西洋には、それこそ「あちゃーっ、なんというお尻だ!」と言いたくなるようなビッグサイズのおばちゃんが大勢いますから、こちらも念のためお気をつけ下さいね。

突然怒鳴られたり引っぱたかれたりはしたくないですものね…!(笑)

「飯を食う」

これは最強です…!👀

日本語の「飯を食う」は、ポルトガル語話者の耳には「私はお尻のア〇をいじりました」と聞こえます。上のケースのような「聞こえる可能性がある…」などという可愛いレベルではありません。思い切りそう聞こえます!しかも相当上手なポルトガル語で話しているように聞こえます!

「でも、実際言うときは『飯、食う?』とかだから大丈夫なんじゃないの?」

…と思いましたか?!

ところがどっこい、定冠詞の「o」が抜けた分、下手なポルトガル語に聞こえはしますが、「私、お尻のア〇、いじったアルヨ」くらいには聞こえます。ですから街中でこんなことを言おうものなら、

「変な黄色人種が気持ち悪いことを言っている~!!」

と思われ、白い目で見られるのは必至です。

Σ(Д😉ヤバッ!

ちなみに私個人の場合、どうして「参ってしまった」かというと、調査団の通訳要員として「おじさんの集団」と出歩くことが多かったからです。

なんたって「おじさんの集団」ですから、街を連れ立って歩いていると、

「おーい、そろそろ飯食うか?」

だの、

「○○くーん、君も飯食う?」

だの、

極めつけは、レストランの前で

「おーい、ここ飯食う?!」

orz…

当たり前のように、というか当たり前のことなので、毎日欠かさず、このような台詞が口を付いて出てしまうんです、おじさん達は…。

えっ、おじさん達に意味を教えなかったのかって?

教えましたとも!

でも、そもそも現地人に聞こえないところで教えなければならないこともあり、タイミングを逃しがちですし、ましてや、初めて街中でそれをやられた流れの混みあったレストランで教えるわけにはいかないですし、そもそも教えたら教えたで、面白がって、わざと言う人もいるしで、なかなか難しいのですよ、これが…。

⤵⤵⤵

ちなみにこの「メシヲクウ【Mexi o cu】」という文で一番問題となる単語が「食う【cu】」なのですが、これこそが「お尻の穴」を意味するのです。

あっ、「肛門」と言えと?!

いえいえ、「肛門」というなら、英語と同じ「ânus【アヌス】」という単語が存在します。前述の「う〇ち」や「お〇〇〇ん」同様、「お尻のア〇」が妥当なのです。それどころか、むしろ「ケ〇のア〇」の方がピッタリかも!👀

だからこそ、なおさら公の場で大声で…というのは止めてほしいのです…。⤵ orz…

ちなみに綴りが「cu」ということで、日本語を絡ませるまでもなく、この単語は現地の化学の先生をも当たり前のように悩ませるものです。「についてだけは教えたくない」というのが先生方の本音かもしれません…。笑

更に日本人/日本語ならではという悩みがあります。それがこれ。↓

そうなのです。「クジハン(cu de rã)」とは「カエルのお尻のア〇」に聞こえるのです。とはいっても、欧州葡語の場合は【ク―・ドゥ・といった感じの発音になるので、このような連想は導きませんから、「対ブラジル人限定」なのですけれどね…。

で、何故これが「日本人/日本語ならでは」なのかというと、日本で仕事をしていると、「9時半」というのは、就労時間を9時始まりとする前提で、会議にせよ、待ち合わせをするにせよ、誰かを訪問するにせよ、電話をするにせよ、なにかとセッティングするのに「便利な時間」なので、あっちでもこっちでも「じゃあ、9時半に」「ああ、9時半頃でいいですかね?」といったことになり易く、これは日本人がポルトガル語圏で仕事をする場合でも(相手は8時から働いていることが多いのに…)そうなりがちですし、そもそも海外に行くまでもなく、日本の企業で働くポルトガル語圏人といえば、概ねブラジル人と相場が決まっていますからね…。

なにせブラジル人といえば、無類のジョーク好きで、何歳になっても「箸が転げても…」な人が大勢いますし、一方の日本語には「ク」で始まる単語も「ク」で終わる単語も数えきれないほど存在しますから、日本語教師も大童です…。

「行きますの原形は行く」と教わり「ワッハッハ!」「掛け算は九九」と教わり「ワッハッハ!」「女性の忍者はくノ一」と教わり「ワッハッハ!」… といった塩梅になりがちなのです…。

いや、笑うのは健康に良いので、こんなにいいことはあるまい!…ってことにしておきましょうかね…。笑

お下品な話にて失礼致しました! m(_ _)m

でも、「お下品」だからこそ、事前に覚えて頂かねばと思った次第ですので、渡航前には是非とも頭に叩き込んで下さいね!

https://note.com/smahof