会報『ブラジル特報』 2011年月号掲載
ブラジル日本商工会議所 創立70周年に当たって

                          山田 唯資(前監事会議長)


多くの先進国が日本も含めて2008年のリーマンショック以来、その経済回復が手間取っている中で、ブラジルはその回復が迅速で、内需の拡大とも相俟ってBRICsの中の花形として世界経済界の注目を浴びている。その結果として諸外国とブラジルとの経済交流は現在著しく激化しており、特に中国、韓国のそれが顕著になっている。

 そういった環境下で、ブラジル日本商工会議所は2010年7月16日に開催された臨時総会で画期的な大規模な定款改正を満場一致で可決した。当然ながら、その主要目的は、先ず第一に会議所は世界経済のグローバル化に迅速に対応出来る組織である必要があるためで、即ち具体的には、

(1)世界経済のグローバル化は必然的に対外、対内、ともに官民協調による交渉の成果の実現が要求される時代に突入していることを意味し、したがって会議所はその体制内での一つの要(かなめ)として行動出来る組織であることが必要不可欠である。
具体的な一例を挙げてみても、大使館、総領事館その他の政府関係筋と進出企業との意思疎通の上で、両者間のより緊密な介添え役的な役割を会議所が持つことは緊急、かつ不可欠なことである。

(2)既に進出してきている日系会員企業のニーズを的確に集約し、その重要性にあった対応策を関係組織との間で調整し、彼らのニーズの迅速な解決を可能に持ってゆける会議所であること。

(3)潜在性のある進出日系企業に対する可能な範囲内での援助策が出来る会議所であることが望ましい。

(4)他国からのブラジル進出企業で構成する国別商工会議所や国内の諸業種団体との協調も忘れてはならない。因みに、これも一例であるが、北米会議所は会員数5千社を超える大組織でもあり、我が会議所も今後の会員数増加を画策する上で、あるいは実施事業拡大の上でこれ等団体との協調はプラスに作用すると考えられる。

 (5)ブラジルの場合は他国内のそれと違い、日本人の当国移住には既に100年を超える歴史があり、国内には150万人以上の日系人が生活し、諸方面で活躍著しいものがある。したがって、可能な範囲で、日系社会の諸団体とも連携し、日本ブラジル間の友好親善と日本文化の当地での紹介の一翼を担うことも会議所の社会責任遂行の一部を構成するのではないかと思う。

以上の諸点が主要なものであろうかと私は考える。その意味から見て、本文の冒頭で述べた今回の会議所の定款改正は「その必要性を満たす上での会議所体制整備の根底作り」の第一歩を踏み出したものと私は理解し、現会議所執行部の今回の改正への決断を高く評価するものである。今回の定款改正の要点を、私なりに取り上げると次のとおり。

——常任理事会は、駐ブラジル日本大使と駐日ブラジル大使を会議所名誉会頭に、駐サンパウロ日本総領事を同じく名誉顧問に推戴することが出来ると定め、その承諾を得たこと。

——会議所の業務執行最高機関である常任理事会メンバーの選出母体である理事会の構成メンバー数を半減して30名とし、かつ今後は理事会は会頭のみを選挙するとしたこと。

—選挙で当選した会頭が、会頭の権限で常任理事会の他の12名全員のメンバー、即ち4名の副会頭、8名の専任理事を指名し、それぞれの分担職務を執行せしめ、常任理事会の任期を従来の1年から2年に延長したこと。ならびに同一会頭の職務の継続は原則として2期の合計4年としたこと。

——監事会議長の任期も1期2年とし、同議長は会議所の業務執行と会計処理の監査を主宰する事を明確化したことである。

以上から私は「今回の定款改正は、21世紀の世界経済のグローバル化に迅速に会議所活動を対応させようと願う現執行部の適切な決断の発露」と理解する次第で、これからの会議所がその趣旨の実現に果敢に取り組むことを祈ってやまない。