会報『ブラジル特報』 2013年9月号掲載

                             大前 孝雄 (日本ブラジル中央協会会長)


 去る6月19日に開催された平成25年度日本ブラジル中央協会定時総会・理事会において、先般、急逝された清水前会長の後任として第10代会長に選任された今、あらためてその責任の重さに身の引き締まる思いでおります。

 思えば、私とブラジルとの関わりは古く、1973年に三井物産に入社後、75年に初めてブラジルの地に足を踏み入れて以来、かれこれ40年近くに及びます。
 そのうち20年強の間、都合三度にわたる駐在を通じて家族ともどもブラジルで暮らし、そこでのビジネスに携わって参りました。その節々でブラジルという国の変化を目の当たりにしてきただけに、20年前、30年前に比べ現在のブラジルの成長ぶりはまさに隔世の感があり、こうした成長振りに対する喜びと今後のさらなる成長への大きな期待を誰よりも強く抱くものの一人として、ブラジルへの思いは誰にも負けぬと自負しております。こうした浅からぬブラジルとの縁もあって、今回、当協会の会長を拝命したのだとすれば、そこにブラジルとの不思議な運命の絆を感じます。


 さて、皆様ご承知のとおり、当協会は80年を超える長い歴史と伝統を誇り、その間、日本とブラジル間の経済および文化の交流促進を通じて、両国間の友好・親善に少なからず寄与して参りましたが、残念なことに1990年代後半から2000年代前半にかけて会員数、事業予算規模ともに徐々に往年の勢いを失いつつありました。05年に会長に就任された清水前会長はそのような状況に強い危機感を持たれ、様々な制約がある中で如何にして往年の勢いを取り戻し当協会の再活性化を図るかに日々苦心されてきました。そのご尽力のお蔭もあって、ここ数年徐々に会員数も増え、財務内容も改善しつつあり、このモメンタムを如何に維持、強化していくかが私並びに新役員に課された責務と任じています。

 即ち、当協会の体制強化と活動内容の充実を通じ一刻も早く往年の魅力と活力を取り戻すとともに、これを基盤として日本とブラジル関係のさらなる活性化に向けた活動を強化していきたいと思います。このため成すべきことは数多く、オフィスの移転、ホームページの改善、情報発信機能の強化、ポルトガル語講習の拡充を含む各種文化啓蒙活動の強化、志を同じくする多様な諸機関・団体との連携強化等、数え上げればきりがありませんが、これらを一つ一つ着実に実行し、当協会の知名度向上を図るとともに、受益者たる会員の皆様への質・量両面でのサービスの強化に努め、企業人のみならず広く一般の人々にも関心を持たれるよりオープンでアクセスが容易な協会へと変えていきたいと思います。そのためにも先ずは会員数の増強を通じた財務基盤の強化が急務であり、関係者一致団結して先ずは早急に法人会員100社、個人会員300名体制の達成を目指します。

右よりルーラ大統領・槍田三井物産社長(いずれも当時)と筆者 :於ブラジリア大統領府


 冒頭にも述べたとおり、私は通算20年強におよぶブラジル駐在生活において、その節々でブラジルという国の変化を目の当たりにしてきました。それだけにこの数十年のブラジルの成長ぶりは目を見張るものがあり、あらためてこの国の持つポテンシャルの大きさを実感します。
 半世紀に及ぶ時代の変遷を経てブラジルは大きな変貌を遂げ、今や自他ともに認める大国として世界の大きな注目を浴びています。会社生活の大半をブラジルとともに過ごしてきた私にとって、ブラジルは謂わば第二の母国ともいえる存在であり、それだけにこの成長ぶりを誰よりも嬉しく思う一方、だからこそ今後我が国は官民一体となって一層この国との関係強化を図っていくべきとの思いを強くしています。大型ナショナルプロジェクトの実施を含めた長年にわたる協力の実績と、100年を経て150万人を超える日系社会が長きにわたり綿々と築き上げたブラジル社会での高い評価と信頼という他国を凌駕した優位性を活かし、お互いにwin-win の関係を構築していこうとのモメンタムを作り上げる時が今まさに到来しているといっても過言ではありません。
 こうしたバックグラウンドの下、新たな時代を迎えた日本とブラジルの間の懸け橋となるべく、会員の皆様とともに当協会の活性化を通じ日本ブラジル両国のさらなる関係強化に尽力して参りますので、どうぞ倍旧の暖かいご支援、ご協力を宜しくお願い申し上げます。