会報『ブラジル特報』 2014年1月号掲載
日系企業シリーズ 第28

     
吉田 聡 (YSA南米横河() 社長)


 横河電機は1915年設立より98年間、一貫して計装制御機器、および計測機器の生産販売を続け、高品質の制御機器、センサー、および計測機器類を世界中のあらゆる産業へ供給してきました。計測制御機器類が実現する安全で効率的な操業により、お客様が品質の高い安価な製品を世に送り出す事を可能にし、これを通じて社会に貢献することに努めてまいりました。
弊社の南米における歴史は、1960年代から始まるブラジルの奇跡と呼ばれた時代に、鉄鋼、アルミ、マイニング、石油化学、ガス、薬品、紙パルプ、食品、インフラストラクチャーほか多岐にわたる弊社お客様の進出にともなって多くの弊社製品もブラジルに渡ってきたことから始まります。そして、それらのプラント立上げ、増改造、修理など現地サービス体制の需要に応えるため、1973年11月にYokogawa Eletrica do Brasil (YBR) を設立し、国産化政策による幾多の変遷を経て、現社名 Yokogawa America do Sul (YSA) となり、今年で法人活動40周年をむかえました。

法人活動40周年を迎えた南米横河 Santo Amaro工場(Alphavilleに本社営業所)


1970年代 ◆
Yokogawa Eletrica do Brasil(YBR)の設立
YBRはオートメーション機器ならびに計測器の輸入および一部国産化を進めることにより業容を拡大してきましたが、1979年、工業計器の輸入制限が始まり、YBRの活動は後に92年以降外資の参加が自由化されるまで、計測器の国産および輸入販売に限定されることになります。その間も工業計器の現地企業への技術移転や代理店契約を統括管理し、86年には現Santo Amaro工場を建設するなど次世代への備えを行った結果、98年現YSAと統合するまでの25年間、YBRの社名の下で横河独自の経営を継続することが出来ました。(下図参照)

 


1980年代 ◆
ブラジル資本によるJVECIL P&D)設立
 1982年には当時最新鋭のコンピューターベースの制御システムにおいても国産化政策が実施され、1992年に外資の参加が自由化されるまでの約10年間は、国策に沿って、国内資本によるジョイントベンチャーECIL P&D社に対して4世代にわたる新製品の技術を移転し続けることにより、ブラジルの工業振興に尽くしてきました。85年からはトレーニングセンターを開設し、ユーザー様のエンジニアやオペレータおよび大学とも連携して学生も含めてのプラント制御技術ならびに計装教育を開始、以来28年間で約18.700名の卒業生を送り出しました。JVパートナー様の活躍も素晴らしく、ブラジルにおける横河ブランドの制御システムのシェアNo.1を確保し現在も継続しています。

1990年代 ◆
JVの経営権取得、YBRの統合、南米統括拠点化
 1993年、外国資本参加の自由化にともない、現地資本のJVである ECIL P&D を買収し社名を現在のYokogawa America do Sul (YSA) とし、98年には計測事業の YBR とも統合を果たし現在に至っています。

2000年代 ◆
経営の現地化と南米各国への進出
YSA の経営が安定軌道に乗ったことを踏まえ、2000年には最後の日本人駐在を引上げ、ブラジル人社長へ経営を移譲し、いち早く経営の現地化を実現しました。また、ブラジルビジネスをさらに拡大するとともに、南米統括会社へ格上げし、チリ、アルゼンチン、ペルー、コロンビアに拠点を設け、活動基盤の整備拡大をしてきました。

2010年~ ◆
南米市場の更なる拡大に備えたイニシアチブ強化
サッカーワールドカップおよびオリンピックを開催するブラジルを中心として、今後とも継続して成長が期待される、人口3億を擁する南米経済圏への活動をさらに強化するため、2012年から経営を日本人駐在員に戻しました。現在YSA はキューバを含む南米全域に活動を拡大し、従業員420名を擁しています。今後とも安全と生産性と環境保全を、高いレベルで実現する高度制御などソリューションプロバイダーとしての活動に加えて、人材の育成・教育等の面でも活動を継続し、ブラジルおよび南米各国の産業界の競争力向上に、微力ながら貢献を果たしてまいります。お客様、パートナーの皆様には、さらなるご支援ご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。