会報『ブラジル特報』 2007年9月号掲載
近井 昭夫 (カフェ・ド・セントロ・ジャパン㈱ 代表取締役) |
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6世紀に人類がコーヒーを発見し、11世紀の初めに飲用として利用し始め1554年にトルコのコンスタンティノーブルに世界初のカフェテリアが出来、その後コーヒーは1600年代にヨーロッパ・アメリカに広がっていきました。エチオピアが原産のコーヒーは赤道を挟んだ南北緯約25度の地域で生産されて、1700年代初頭にギアナを経由してブラジルでも栽培されるようになりました。 1850年以来、ブラジルは世界最大の生産地になり、近年では世界の生産量の30%を担っております。日本での2006年の生豆の輸入量をみても116,507トンと総輸入量422,696トンの約28%を占めております。しかし輸入量では1位ですが輸入単価という側面から見ますとロブスタ種が15~20%含まれているとはいえ、kg当り269円と11位になります。ちなみに生産量第二位のコロンビアは世界の生産量の10%を担い、日本への輸入は86,725トンと20%を占め輸入単価はkg当り302円で輸入単価は5位になります。
スペシャルティコーヒー・スペシャリティコーヒー・プレミアムコーヒー・グルメコーヒー等様々な高品質コーヒーの名称がありますが、スペシャルティ(スペシャリティ)コーヒーが高品質コーヒーの名称として市場に認知されつつあります。スペシャルティコーヒーとは1978年エルナ・クヌッセン女史(クヌッセン・コーヒー社)がコーヒー国際会議の席上で「スペシャルティコーヒー」という表現を用いたことから始まっています。「特別な地理的条件が特別な風味のコーヒーを生む」という提唱のもと各国に広がっていきましたが、歴史が浅く厳密な定義はありません。各国のスペシャルティコーヒー協会が建設的に決めているようです。各国のスペシャルティコーヒー協会の考え方を見ますと
ブラジル(BSCA) は主に生産者としての立場から啓蒙に力を入れております。 上記からいえることは、生豆の段階では厳密にはスペシャルティコーヒーとはいえずに、スペシャルティコーヒーになる可能性を持った生豆ということになります。農産物であるコーヒーの生豆をキチンと鮮度管理をし、優れたロースター(焙煎士)が適切なロースト(焙煎)して熟成を行い、抽出器具に合ったグラインド(挽き)で適切な抽出器具で抽出され、温められたカップに注がれた液体の段階でようやくスペシャルティコーヒーといえるのです。上記のどのプロセスが欠けてもスペシャルティコーヒーとはいえません。 さらに品質向上に熱心なブラジルの生産者(BSCA)が最高級品質の称号を与えるために、"Cup of Excellence"という品評会を近年開始しました。Cup
上記により良い生豆を生産するために様々な品種改良・中間処理法が試されているのがわかります。これらの生豆はオークションにて高価格で取引され、流通する際は麻袋にCup of Excellence の商標が付けられています。
ブラジルもそもそも世界最大の生産国でもありますが、世界2位の消費国でもあります。好景気を背景にブラジル国内での消費量(96万トン)も増え、生産量の4割程度を自国で消費しています。自国消費量に占めるスペシャルティコーヒーの割合も2%程度(1万8千トン)になり、年々20%程度増加していて、将来的に良いコーヒーが輸出にまわらなくなるのではと考えているアナリストもいるほどです。サンパウロで人気のスペシャルティカフェショップの価格は通常のコーヒーの2倍ながら、月間に2万杯のエスプレッソが提供されています。 中国などアジア諸国の西洋化により、コーヒーの消費量は増え、価格も上がっております。また、優れたスペシャルティコーヒーを世界中で競って手に入れようとする動きが起きつつあります。色彩的には通常、ブラックとホワイトを混ぜるとグレーになりますが、コーヒーに関しては褐色になります。定かではありませんが、この現象はコーヒーと人間にのみ起こる現象なのだとか。いろいろな多様性を持ち人間味のあるこの飲み物に魅了される人は多く、僕もその魅力に取り付かれた一人です。 なにはともあれ、インスタントでも缶コーヒーでもCup of Excellence でも、ブレイクタイム等にお気に入りの本や音楽・気のおけない仲間と飲むコーヒーがその瞬間のスペシャルティコーヒーといえるのではないでしょうか。さあ、トマ・カフェ! |