11月11日付けValor紙は、5日に発生した鉱物採掘会社であるサマルコ社のダム決壊(往電第1028号参照)により、工場排水が河川に流入し、周辺企業へ悪影響を及ぼしている旨報じているところ、概要以下のとおり。

なお、サマルコ社は大手資源開発会社であるVale社とBHPビリトン(豪)がそれぞれ50%ずつ出資する合弁会社。

セニブラ社、ベロ・オリエンテ市でのセルロース生産を停止

同社はドセ川の水を利用、サマルコ社の廃棄物が悪影響。サマルコ社による惨事は、ドセ川周辺の企業を脅かす。

 

1.日本企業連合により運営されている、ユーカリを原料としたセルロース(当館注:紙パルプの原料)生産業者であるセニブラ社は、ミナスジェライス州ベロ・オリエンテ市にある工場の操業を停止した。これは、マリアーナ市にある鉱物業者であるサマルコ社のダム決壊の影響による。7日(土)から停止しているもので、生産再開の見通しは立っていない。

 

2.同社はセルロースの生産過程で、ドセ川の水を利用している。川の水はサマルコ社のダムが決壊したことにより、泥土が流れ込み、汚染されている。事故発生現場と工場の距離はおよそ200kmである。

 

3.ユーカリのセルロースの世界最大の生産業者であるフィブリア社は、サマルコ社の事故以降、エスピリト・サント州アラクルースにある総合施設で利用している水の品質をモニターしていると公表した。同社はドセ側流域のジムウーナ川の水を利用している。

 

4.「工場用水のくみ上げ地近くのカショエイラ・エスクーラ地区に泥土が到達したため、セルロースの生産ラインの2本を停止した」とセニブラ社は公表した。同社は王子製紙と伊藤忠の合弁企業である。

 

5.昨年半ばのValor社とのインタビューによると、セニブラ社のパウロ・エドゥアルド・ホッシャ・ブラント社長は、工場を最大に稼動させて年間130万トンの生産を行ってきた。この内、一部は日本企業に割り当てられ、上質紙の生産に利用される。残りは他の顧客に販売される。

 

6.同社は「会社と従業員へのインパクトを軽減する代替策は、未だ検討中である」と述べた。また、「現時点で、(事故元からの)公式な情報が得られていないため、オペレーションや環境の復旧への見通しが立っていない。セニブラは、公的な環境団体とともに、状況の進展に関するデータ獲得に努力している」と付言した。

 

7.昨年セニブラの生産の約9割は海外の顧客向けに輸出された。割合は、日本20%、中国20%、ヨーロッパ10%である。残りはブラジル、あるいはラテンアメリカ市場で販売される。

 

8.アナリストの分析によると、セニブラ社のセルロース生産停止は、国際市場でのセルロースの価格維持には好都合であるとのシナリオが描かれている。昨日のボベスパ証券市場では競合企業であるフィブリア社やスザーノ社の株価が恩恵を受けた。フィブリア社の普通株は約5%上昇し、54.50レアルとなり、スザーノ社の優先株は3.8%上昇し17.48レアルとなった。

 

9.サマルコ社のダム決壊によるドセ川の廃棄物汚染は、ミナス・ジェライス州及びエスピリト・サント州の10以上の市町村を厳戒態勢に陥れている。

 

10. フィブリア社は、この事故は(同社の)エスピリト・サント州での操業には影響を与えないと予想している。しかしながら、不測の事態が生じた場合、100日間の操業に耐えうる貯水槽に頼る可能性があるとのことである。同社の2014年のサステナビリティ報告によると、昨年生産されたセルロース1トン当たり、アラクルース部門だけで平均33.6立方メートルもの水を利用するとのことである。