サンパウロに赴任した最初の日曜日に、一人で地下鉄に乗って、中心部のセー広場に出かけた。有名なセー大聖堂があるところで、地下鉄を降りた時点で、治安が悪そうという印象を受けた。ざっと見学した後、日本人街のあるリベルダ―ジ地区を歩いた。翌日、秘書のマリアさんに日曜日に中心部に出かけたことを話すと、「所長、危険なところに一人で出かけてはいけません」と強く警告された。彼女のアドバイスにほとんど従わず、あちこち出かけたが、幸いなことに一度も危ない目には会わなかった。もちろん、危険なところに行く場合は、それなりに用心はしていた。
ブラジルというとサッカーが有名だが、2年5カ月の間に8回サッカーを見に行った。本当はもっと行きたかったが、ミラノのようにはいかなかった。日本やイタリアのように前売り券を売っているところが無いか見当たらず、当日スタジアムの売り場で並んで買わなければならなかったからである。最初は、友人の日本人とモルンビー・スタジアムにタクシーで出かけた。その後、子供たちと一緒にパカエンブ―・スタジアムに出かけた。一度、これまた一人でアパートから人気チームのコリンチャンスの試合を見にパカエンブ―・スタジアムに出かけた。アパートから地下鉄のパライソ駅まで歩き、そこから地下鉄クリニカ駅まで乗り、15分くらい歩くことになる。スタジアムでチケットを購入し、試合を見学した。終了後は、同様のルートで帰宅した。翌日、マリアさんに話すとまたまた叱られた。サンパウロでサッカーの試合を見に行くことは、危険が伴うとよく言われる。何故かと問い合わせると、いろいろな意見が出されるが、多くの人が、①サッカーを見に行く往路・帰路でピストル強盗などに会う危険と②サッカーのフアンどうしの争いに巻き込まれる危険をごっちゃにしていることがわかった。この2つは、解決が十分に可能である。往路・帰路の危険は、襲われる可能性を想定して、行動すればいいのである。私は、サッカーに行く場合は、常に短パンとTシャツで出かけ、クレデイット・カードや大金は持参せず、小銭を数か所のポケットと靴下の中に入れていた。仮にポケットの小銭を盗まれた場合でも、靴下の中に入れていた小銭でアパートまでタクシーで戻れる用意をしていた。
フアン間の争いも回避できる。フアン間の争いはどのような場合に起こるのかを考えればいいだけである。0対0、1対1、2対2等の引き分け試合は、お互いが健闘したことを双方が認識しているので、まず争い事は起こる可能性は低い。また2対1とか3対2などの接戦の際にも同様である。問題は、5対1とか4対1とか3対0とかの一方的な試合になった場合である。その場合は、フアンが相手を挑発し、それでフアンどうしの争いが始まるのである。それを避けるには、試合の展開から判断し、険悪になりそうな試合展開になれば、試合終了の5~10分前くらいにスタジアムを出て、列をなして待っているタクシーに乗って家に戻ればいいのである。もう一つ留意すべき点は、コリンチャンスは白色、パルメイラスは緑色等チームのユニフォームの色が決まっていることである。特定のチームを応援する場合は、ファン心理としては、応援するチームのユニフォームやシャツを着て行くことになるが、ファン間の争いに巻き込まれたくない場合は、双方のチームのカラーと異なる色のシャツを着て行くようにすべきである。
投稿者:桜井悌司