演 題 : メルコスールのFTA交渉
講演者 : 彦田尚毅 外務省南米課長
FTA交渉については豊富な経験を有する彦田課長に、メルコスールを巡る動きについて語っていただいた。
まず、2015年以降の最近の動向を、域外、域内にわけて概観。
域外の主な出来事としては、①2015.7月、太平洋同盟枠組み協定発効、②2015.10月、TPP大筋合意(TPPに対しては、1)アルゼンチン:将来的には参加希望、2)ブラジル:テメル暫定政権は積極的経済外交・自由化方針なるもTPPに関しては不明、FIESP(サンパウロ工業連盟)はTPP加盟に前向き、3)ウルグアイ:TPP参加に関心あり、4)パラグアイ:不明)、③2016.5月太平洋同盟追加議定書発効
域内については、
=アルゼンチン=
2015.12月マクリ政権発足(自由開放経済路線)、2016.5月、プラット財務大臣、「ルセーフ大統領の停職によって、EUとのFTA交渉、太平洋同盟との経済圏創出に向けた合意を早めることにつながるかも」と発言、2016.5.23、セーハ外相、訪亜(マクリ大統領から、域外国とのFTA締結に関する柔軟性を希望する旨言及)、2016.6月、マルコーラ外相発言(今後メルコスールを弱めるのではなく、強めていくべき、メルコスールはアルゼンチンが世界に復帰する上で中心的な役割を果たす、と)
=ブラジル=
2015.9月、日伯EPAに係わる経団連・CNI(全国工業連盟)共同研究報告書、2015.5月、テメル暫定政権発足(積極的経済外交・自由化色)、新外相にジョゼ・セーハ就任、就任演説の主要点(WTO重視から二国間FTA重視へシフト、アルゼンチンとの連携重視、メルコスール刷新、太平洋同盟との連携強化、欧米・日本との関係強化)、2016.5.23、伯亜外相会談(ブラジルは、メルコスールを単なる自由貿易圏とすることを提案。アルゼンチンは、慎重さを求め、メルコスールに柔軟性を持たせるには他の選択肢もある、と発言)
=ウルグアイ・パラグアイ=
2015.6月-12月、パラグアイがメルコスール議長国(関税同盟としての設立原則に立ち返ることの重要性、EUとのFTA、太平洋同盟との関係強化など)、2015.11月、バスケス・ウルグアイ大統領訪日(日本・メルコスールFTAへの関心表明)、2015.12月、ウルグアイがメルコスール議長国へ(EUとのFTA合意、域外諸国との関係強化に向けて尽力する、と宣言)、2016.3月、ロイサガ・パラグアイ外相訪日(日本・メルコスール間のFTAへの関心を表明)、2016.4月、カンセラ外務次官の発言(ウルグアイ政府は、ある加盟国が特定の国との交渉を拒んだ場合、単独交渉が可能となる、ように、メルコスール決議32/00の変更を提案する。)
=メルコスール全体=
2015.12月、第49回首脳会合(主要点:①域内統合の強化、80項目からなる関税・非関税障壁措置に係る行動計画、②域外国との関係強化、EUとのFTA推進、太平洋同盟との関係強化)、2016.5月-6月、域外国との対話週間(日本、インド、カナダなど)、2016.5.11、EUとのオファー交換、2016.5月、太平洋同盟との次官級会合、2016.6月又は7月、第50回首脳会合(注目点:内外経済アジェンダの進展、特にFTAに係る方針が、①引き続きブロックとして交渉、②関税同盟の柔軟な運用、③共通対外関税放棄)
次に、メルコスールのFTA/経済補完協定などの締結状況について
【経済補完協定】
チリ1996年、ボリビア1997年、メキシコ2006年、ペルー2006年、キューバ2007年
【FTA】
イスラエル2010年、EU交渉中、カナダ予備的協議実施中、エジプト批准まち、パレスチナ批准まち
【部分的特恵関税協定】
インド2009年、南部アフリカ関税同盟2016年
最後に、ACFI(ブラジルの投資協力円滑化協定)の条文を解読するケーススタディーが行われた。
日 時
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2016年6月15日(水)15:00~16:30 |
会 場 | IDB米州開発銀行アジア事務所会議室(内幸町富国生命ビル16階)
アクセスマップ |
定 員 | 先着35名 |
会 費 | 個人会員 1,000円 法人会員 2,000円 |
お申し込み | 下記フォームよりお申し込みください。 |
お問合せ | 日本ブラジル中央協会 事務局 担当:宮田、上条 info@nipo-brasil.org |