演 題 : 私の国際ビジネス経験、そしてジャパンハウスの挑戦
講演者 : アンジェラ平田 氏(ジャパンハウス・サンパウロ事務局長)

 

01

 

(ロンドン、ロサンゼルスよりも先行して5月にオープン予定のジャパンハウス・サンパウロ。その事務局長兼館長として奮闘中のアンジェラ平田氏は、日系二世だが、ブランド戦略・マーケッティングの世界では国際的に知られたビジネスウーマンだ。“マーケッティングの神様”コトラー教授と一緒に講演旅行をしたこともあるアンジェラ氏に、超過密スケジュールの合間を縫って、ご自身のビジネス論とジャパンハウスへの思いを語っていただいた。 )

 

  • ハワイアナス(Havaianas)のブランド戦略について

アンジェラ平田 氏

日本の草履をルーツとするビーチサンダルの代表ブランド、Havaianasがブラジル市場に登場したのは1962年。1970年代は市場におけるランクは、A・Bランクであったが、1990年代にはC・Dランクへダウン、すなわち、量は売れるが「安かろう悪かろう」のイメージが固まっていた。このブランド再差別化戦略を立ち上げたのが1993年で、私が責任者であったが一人でやった訳ではなく、チーム全員で知恵を出し合ってブランド戦略を構築したのだ。まず、ブラジルにおけるアート文化を再学習したうえで、ブランドのコンセプトを、「ブラジル的混淆、文化遺産を代表するHavaianas」と再定義し、戦略的に選択した市場は、①豪州、②ブラジル、③米国、④日本、⑤欧州、でこれらの市場を集中的に攻めることにした。

こうした戦略転換の結果、2000年代に入って、オーストラリアにおいては市場シェアー一位の高級サンダルとして定着、米国では2004年と2005年のアカデミー賞セレモニー会場にてニコル・キッドマンといったセレブたちにHavaianasを履いてもらったり、トム・クルーズと渡辺謙が共演した「ラストサムライ」のなかでも使ってもらったり、といった“実績”を重ねた結果、NYタイムズやVeja誌などの有力メディアも何回も取り上げるようになった。

こうした経験から、「企業家精神」は、reason(理性)+sensibility(感性)+ emotion(感動)の有機的結合であり、文化的伝統への敬意があってこそ、はじめて真のコミュニケーション力となる、と考えている。

 

  • ジャパンハウス・サンパウロについて

ジャパンハウス・サンパウロの基本コンセプトは、まさに建物の正面にあらわれている。すなわち、ファサードは日本の檜木を格子状に組み合わせた「地獄組み」とブラジル(ノルデスチのレシーフェ)の「コボゴー」様式の日伯混合建築様式となっている。

この建築デザインは隈研吾氏、総合プロデューサーは原研哉氏。

JHサンパウロで伝えたい日本文化のコンセプトは、①環境(自然への敬意)、②教育(教育や文化に接する機会を創出)、③平和と協力、であり、さらには、マニュアル化できない、日本的な「おもてなし(Hospitality)」である。

日本文化の三大要素である、①モノ、②ヒト、③ヒストリー、それぞれを有機的に交流する場を設けたい。(具体的な分野としては、アート、ミュージック、研究、物販、展示会、セミナー、ショー、など)、JHサンパウロの建物は、三階で床面積はトータルで2,500㎡だ。(より細かな説明は、中央協会の『ブラジル特報』2017年1月号に寄稿したので、そちらを参照願いたい。)

例えば、沖縄の芭蕉布プロジェクト。人間国宝の染織家、平良敏子さん(96歳)も賛同していただいており、単なる展示というよりもブラジルにおいて芭蕉選定(バナナの品種改良)から芭蕉布を実際につくる段階まで進める構想が煮詰まっている。

私自身のビジネス経験も生かして、文化・教育交流とビジネス交流を活性化するための仕組みも考えており、日系企業・ブラジル企業が参加できるような、スポンサー制度やメンバーシップ制度(法人会員、個人会員)も立ち上げる。

JHサンパウロに来ていただきたい人は、日系に限定しないブラジル人、さらには中南米諸国の国民であり、在ブラジル日系社会が移民一世たちから受け継いできた「伝統的な日本文化」とは違っているかもしれない「新しい日本文化」を提示・発信したいと考えている。

そうした観点から、JHサンパウロを運営する事務局には、日系にこだわらない人選を行った。私、アンジェラ平田は、事務局長であったが、2月から館長も兼任、キューレーターは、「ポルトガル語博物館」やコロンビアの「カリブ博物館」、ベルリンの「民俗博物館」などでキューレーターを歴任してきたマルセロ・ダンタス、そしてPR局長は大手出版社Abril社などで活躍したネリー・カイシェッタだ。

ちなみに、オープニング日程は現在調整中だが、5月前半の予定である。

 

日  時 2017年2月28日(火)
14:00~15:30
会  場 米州開発銀行アジア事務所会議室

住  所: 千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル16階
アクセス:都営地下鉄三田線「内幸町」駅 A6出口・・直結
JR山手線・京浜東北線・東海道本線「新橋」駅 日比谷口・・徒歩6分
東京メトロ千代田線・日比谷線「霞ヶ関」駅 C4出口・・徒歩3分
東京メトロ丸ノ内線「霞ヶ関」駅 B2出口・・徒歩5分

会  費 【個人会員】1,000円
【法人会員】2,000円
【非  会  員】3,000円
お問合せ 日本ブラジル中央協会 事務局 宮田・上条
E-mail:info@nipo-brasil.org