講演者:舛方周一郎 神田外語大学外国学部専任講師
演 題:ブラジル政治情勢 ~ 歴史から最新情勢を読み解く
今年2018年は、ラテンアメリカ各国で大統領選挙の年だ。パラグアイ4月、メキシコ7月、ブラジル10月、となっているが、ブラジルに焦点を絞ってお話する。
労働者党政権が終焉し、政治の分極化が起きているように見え、代議制民主主義への不満から抗議行動が拡大して、軍部に政治介入を求める声が広がっている。こうした現状から、「民主主義の揺らぎ」が起きている、との見方もあるが、私の主張したいポイントは、「既成政党に対する不信が高まっているものの、左右の二極化を中心とした政党政治は崩れていない」という点である。
ブラジルの歴史(近代史)と政治学の観点から、現在の政治情勢を読み解いてみたい。
まず、ラテンアメリカ政治全体のなかでブラジル政治を位置付けると、二つのシステムを指摘することができる。即ち、①小政党が乱立する「制度化しない政党システム」(1985年の民政移管後の政党政治は、政党内規律が弱く、議員の政党鞍替えは頻繁、左右政党間の日和見的な同盟でコロールというアウトサイダーが出現した)、②穏健な多党制のもと「制度化した政党システム」。1994年までは①であったが、1995年以降は、②となってカルドーゾ政権からルーラ政権にかけて二大政党(PT=労働者党、とPSDB=社会民主党)による連立体制であった。これはラテンアメリカの政党政治研究における興味深い事例である。
歴史的な視点から見直すと、㋐民主主義の移行期(1985-1995)㋑民主主義の定着期(1996-2010)㋒民主主義の「脱定着期」(2011~??)、と三つの時代区分が出来る。㋑の期間においては、PMDB(現MDB)が調整役として急進化を防ぎつつ、民主主義が定着して安定した政党システムをつくった。この民主化の過程では、政治階層の亀裂(富裕層VS貧困層)がネオリベラル改革をめぐって起きたが、これが唯一の亀裂だった。
2016年、ルセフ大統領弾劾・停職によりテメル大統領となり、開放経済へ政策が転換され、政治難局を乗り切り、労働法改正などの構造改革は市場から評価されている。また、保守勢力の台頭も指摘できる。
10月の総選挙・大統領選挙において争点となるのは、①汚職問題、②経済政策、③治安・安全保障、④社会保障改革、⑤医療、教育問題、⑥移民・難民(ベネズエラ難民)、⑦人種・ジェンダー問題、など。
大統領選挙の見通しは、現時点では不鮮明な部分が多いが、私なりに大胆に予想してみたい。ルーラ元大統領は立候補しない前提でのシナリオは、①アルキミンVSシロ・ゴメス、②アルキミンVSマリナ・シルバ、③ボルソナロVSマリナ・シルバ、④シロ・ゴメスVSマリナ・シルバ、⑤ボルソナロVSアルキミン、といった対決パターンになるだろう。
まず指摘しておきたいのは、「ブラジルの政党システムと民主制度は揺るがない」ことである。その点を再確認したうえで、政党システムと歴史的観点から予測すれば、今後マリナ・シルバとボルソナロの支持率は下降するだろう。結局、アルキミンとシロ・ゴメスの対決となって、接戦の結果、アルキミン勝利の可能性が高い、とみている。
日 時 | 2018年4月23日(月)14:00-15:30 |
会 場 | 新橋レンガ通りホール
住 所:東京都港区新橋2-14-4 マルイト新橋レンガ通りビル 4F (MAP) |
定 員 | 40名 (定員となり次第、締め切りますので、お早めにお申し込み下さい。) |
参加費 | 個人会員1,000円, 法人会員 2,000円, 非会員 3,000円 ※会費は当日会場にて申し受けます。領収書もご用意します。 |