日時:2018年5月14日(月)16:00-17:30
演題:「ブラジルの現状と中南米地域との連携」
会場:田中田村町ビル会議室
1.最近のブラジル政治情勢
2016年8月発足したテメル政権の主な実績としては、①財政健全化(歳出上限設定の憲法改正)、②労働制度改革(「ブラジルコスト」の根源である労働法を抜本改正、但し、まだ不十分と指摘されているが)、③政治改革・選挙制度見直し(多過ぎる政党数の削減、企業の選挙献金禁止など)、を指摘できるが、もう一つの課題である、年金改革(年金支給開始年齢の設定)や税制改革については、今年中に着手される可能性は大変低い。
こうした実績に対する市場・ビジネス界の評価は低くないが、一般国民のテメル政権支持率は史上最低レベル(5%前後)である。
ラヴァジャット汚職捜査は4年目となっているが、継続中であり、多数の政治家・企業家が追訴されている。政治倫理への期待感が高まったこともあったが、あまりの汚職の広範化に国民はウンザリ、政治不信が深刻化している。
こうした中、ルーラ元大統領は今年1月の第二審判決で、収賄と資金洗浄の罪で有罪(禁錮12年1か月)が確定し、4月に逮捕・収監された。これによりルーラ被告の大統領選挙への出馬は不可能になったと理解されていたが、ルーラ弁護団の上訴・抗告によって、出馬資格は喪失していないとの解釈もあり。
2.10月の総選挙(大統領、連邦議員、州知事、州議員)の展望
今後の主な日程は、7月20日~8月5日:各党は党大会にて大統領候補を指名、8月15日:各党は選挙裁判所で候補者登録、8月31日:政見放送開始、9月17日:選挙裁判所による候補者登録審査終了、第1回投票=10月7日、決選投票=10月28日、となっているが、大統領選挙の構図も不鮮明で「史上最も読みにくい大統領選」となっている。
TVタレントや元最高裁長官も出馬を打診されたが、いずれも辞退することとなり、ルーラ元大統領も4月の逮捕・収監で出馬は“赤信号”、現時点での主な候補を列記すると、
①中道右派:PSDB(社会民主党)のアルキミン前サンパウロ州知事が最有力、中道右派の統一候補になれるかがポイント。国民の支持率は低い。
②左派:世論調査で30%以上を維持しているルーラ元大統領が出馬できるか、不明(最終的には、9月に選挙高等裁判所がルーラ氏の出馬登録を受理するかどうかの判断を下す)。PT(労働者党)が代替候補(アダッジ元サンパウロ市長が有力)を出すか、他党との連携を模索するか。他の左派候補としては、マリーナ・シルヴァ元環境大臣やシロ・ゴメス元国家統合大臣が出馬する。
③右派:世論調査ではルーラに次ぐ人気のあるボルソナーロ下院議員(PSL自由民主党)が有力。軍政時代を美化し、「ブラジルのトランプ」といわれているが、私(大使)が会った印象は、「落ち着いた感じの政治家で、本家トランプよりは普通の人、親日家である」。大統領に選出される可能性は低い、とみている。
3.最近のブラジル経済
現在のGDPは世界第8位(日本のGDPの42%),一人当たりGDPは9,895ドル。
二年連続のマイナス成長(2015年▲3.5%、2016年▲3.5%)という景気後退を経て、2017年は1.0%のプラス成長となり、2018年はIMF予測でプラス2.3%、2019年はプラス2.5%の予測。インフレ率も年率2.8%前後と歴史的な低水準で推移、SELIC(政策金利)は現在6.5%、
問題は失業率だ。改善傾向がみられるものの13%と高止まりしている。
テメル政権になって、本格的な景気回復と持続可能な成長を目指す政策を企画しており、外国投資の呼び込み(空港運営、プレサル油田開発などの“民活”)も積極的だ。
4.日本・ブラジル関係の進展
2014年8月の安倍総理訪伯を契機に、「三つの“Juntos”①Progredir Juntos(共に発展する)②Liderar Juntos(共に主導する)③Inspirar Juntos(共に啓発し合う)」を基本方針とする戦略的グローバル・パートナーシップの促進が着実に展開されてきている。
世界最大の日系社会を通じた深い信頼の絆があり、今年3月、皇太子殿下の「世界水フォーラム」ご臨席時にテメル大統領を表敬し日系社会代表とご接見、また、7月の日本人移住110周年記念行事には、眞子内親王殿下のご訪問が検討中。
ジャパンハウス・サンパウロを通じた日本の魅力発信も予想以上(既に70万人以上来場)
5.中南米との連携
テメル政権になって、開かれた外交が志向されており、メルコスルとEU間のEPA交渉は今年中に合意に達するかもしれない。ブラジルとしてはOECD加盟を目指していることも指摘しておきたい。
日 時 | 2018年5月14日(月) 16:00~17:30 |
会 場 | 田中田村町ビル8F 8E会議室
住所:港区新橋2-12-15 |
参加費 | 個人会員1,000円, 法人会員 2,000円, 非会員 3,000円 ※会費は当日会場にて申し受けます。領収書もご用意します。 |
主 催 | 一般社団法人 日本ブラジル中央協会 一般社団法人 ラテンアメリカ協会 |