講演者:  森下丈二 東京海洋大学教授(国際捕鯨委員会日本政府代表)
演 題:「第67回国際捕鯨委員会(IWC)総会(於ブラジル)に向けて」

森下 丈二 氏 (東京海洋大学教授)

(日本政府代表であった森下教授は、昨年よりIWC総会議長(任期2年間)を務めているため、その中立的立場から、日本なり一つの国の方針・政策について関与もコメントもすることが許されない。このため日本政府の立場について、ではなく、捕鯨問題全般について理路整然と語っていただいた。)

 

1.クジラは絶滅に瀕しているか

鯨種といっても88種あり、多くの種類は資源は増加中であり、また過去の乱獲から回復中。IWC科学委員会は、1992年にRMP(資源に安全な捕獲枠計算方式)を開発済み

 

2.捕鯨は法律で禁止されているか

国際法上では、国際捕鯨取締条約附表第10項において、「商業捕鯨の捕獲数は1985年以降ゼロとする、但し、1990年までに、その影響について包括的評価を行い、他の捕獲頭数の設定につき検討する」となっている。

 

3.各国代表のこれまでの発言から

英国代表(1981年)「我々が考えているのは一時停止であって永久禁止ではない」

スペイン代表(1982年)「全面禁止とはみなさない。単に捕鯨の暫定的な中断である」

 

4.捕鯨は残酷か

IWCは爆発銛が最良の手段と合意済み。大部分のクジラは即死であり、他の動物の狩猟に比較しても人道的だ

 

5.世界の世論は反捕鯨か

鯨類の持続可能な利用、を支持する国⇒加盟国数38ヶ国

反捕鯨国⇒加盟国数49か国

 

6.アイルランド提案(1997~2001)

①捕鯨枠の設定は沿岸捕鯨に限定(その他の海域については、サンクチュアリ)
②鯨製品は地域消費のみ、国際取引は禁止
③調査捕鯨の発給を段階的に中止
④ホエール・ウオッチングの(悪)影響を規制する

 

7.これまでの、失敗を繰り返してきた「和平交渉」

①アイルランド提案⇒1997年提案⇒2001年廃案
②RMS(改定管理制度)導入交渉⇒1992年から⇒40回を超える会合が持たれたが決裂
③「IWC正常化」構想から「IWCの将来プロジェクト」⇒2007年から⇒2010年まで
④2010年⇒議長副議長提案と国際司法裁判所提訴

 

8.捕鯨論争の変遷

①科学的不確実性から商業捕鯨モラトリアム採択へ
②商業捕鯨モラトリアム解除のための条件
③資源管理からカリスマ動物コンセプト(動物福祉、動物愛護、動物権)へ
(これが最近の風潮:この“論法”からの反捕鯨国⇒オーストラリアとブラジル)

 

9.捕鯨問題の構成要素とその変遷(1960年代⇒80年代⇒2000年代以降)

①科学  不確実性⇒包括的資源評価⇒改定管理方式⇒漁業との競合、生態系アプローチ
②鯨類資源 いくつかの種が枯渇⇒多くの資源が回復⇒いくつかの種は捕獲可能なレベル
③法規制 シロナガス単位⇒新管理方式⇒モラトリアム⇒RMP(改定管理)⇒改定管理制度
④経済  捕鯨産業の振興 ⇒ 反捕鯨団体の資金稼ぎ
⑤国際政治 国連環境会議(1972)⇒モラトリアム&ジャパン・バッシング⇒「世界の世論」
⑥文化と感情 グローバリズムと文化の衝突 ⇒ 文化の多様性の尊重へ(?)

 

10.IWC改革案の概要

①IWCの意思決定手続きの変更(決議案)
=四分の三の多数の賛成が必要、から過半数の賛成、へ
=捕獲枠の算出指示
=沿岸国の利益の考慮

②商業捕鯨モラトリアムの限定的な解除

 

11.第67回総会の主要課題

①IWC改革提案
②先住民生存捕鯨捕獲枠更新
③パフォーマンス・レビュー報告書の勧告実施
④南大西洋サンクチュアリー提案(開催国ブラジルからの提案)
⑤IWC財政危機問題(IWC本部は英国に置かれているが、このままでは2026年までに財政破綻)

日 時 2018年7月17日(火)14:00〜15:30
会 場 IDB米州開発銀行アジア事務所会議室(内幸町 富国生命ビル16階)
アクセスマップ
都営地下鉄三田線「内幸町」駅 A6出口・・直結
JR山手線・京浜東北線・東海道本線「新橋」駅 日比谷口・・徒歩6分
東京メトロ千代田線・日比谷線「霞ヶ関」駅 C4出口・・徒歩3分
東京メトロ丸ノ内線「霞ヶ関」駅 B2出口・・徒歩5分
参加費 無料
定 員 50名 
(定員となり次第、締め切りますので、お早めにお申し込み下さい。)
主 催 日本ブラジル中央協会
共 催 NPO海のくに・日本
問い合わせ 日本ブラジル中央協会 事務局
(E-mail : info@nipo-brasil.org)