講 師:三浦左千夫 長崎大学客員教授、NPO法人MAIKEN理事長
演 題:半世紀に及ぶ南米風土病研究とその予防活動

 

三浦左千夫 氏

長崎大学客員教授、NPO法人MAIKEN理事長

NPO法人MAIKENについて

1991年設立(法人化2008年)したMAIKENの主な活動内容は、①ノルデスチ(ピアウイ州サンハイムンド・ノナト)の文化遺産の研究保護支援、②在日南米人の医療・教育支援である。ピアウイ州のセーハ・ダ・カピバラ遺跡はユネスコの世界遺産になっているが、ニエデ・ギドン博士(フランス系ブラジル人)が苦闘の末設立したFUNDHAM(アメリカ大陸人類研究博物館)の日本における協力機関として様々なサポート活動を行ってきた。在日のブラジル人やボリビア人らへの医療支援についても、地道な活動を継続している。


「アマゾン先生」細江静男博士について

慶應大学医学部の大先輩である細江博士について改めてお話したい。細江先生(1900-1975)は、1930年ブラジルへ渡り、バストス移住地に病院建設、現在の援護協会の前身にあたる同仁会を立ち上げ、1939年に日本病院(現サンタクルス病院)を落成、戦後もアマゾンなど無医村状態の日系人移住地への巡回医療活動を行い、種痘・腸チフス予防ワクチン配布、毒蛇抗血清の配布、トラホーム検診、十二指腸虫・マラリア撲滅運動などで活躍。並行して予防衛生書(『衛生医学入門』、『十二指腸読本』、『黄熱病の話』、『ブラジルの農村病』など)も執筆・刊行された。私は今でも先生の著書を読み返しているが、現在の医学からみても的確な解説になっていて、毎回再学習させていただいている。私が南米ブラジルへ“お返し”しなければと思っているのも、この細江博士の偉業を知ったからだ。

ちなみに、細江博士の娘婿にあたる森口幸雄さんは現在ポルトアレグレで医師をされており、その息子である森口エミリオ博士(連邦大学医学部教授)が、巡回診療を続けている。

私の南米経験

まだ医学生であった1968年、はじめてペルナンブーコへ渡った。当時は直行便もなく、飛行機を乗り継いで、延べ40時間以上かかったが、連邦大学医学部の熱帯病研究センターでの研究研修は毎日が驚きの日々であった。専門の寄生虫学はもちろん公衆衛生の実態から学ぶ日々となり、ブラジルの魅力にハマってしまった。爾来50年ブラジルには毎年通って研究交流、巡回医療を続けているが、熱帯病はまだまだ撲滅には程遠い。

 

南米風土病について

まず黄熱病。また復活傾向にあり、仲介役の熱帯シマ蚊はブラジルのほぼ全土にみられるので、ブラジルに行かれる方は、予防接種(いささか高価で1万円)をするべきだ。

マラリアについても注意が必要。アマゾン地域だけでなく、サンパウロ州でも発症例が出てきている。蚊が仲介しているが、野生サル~蚊~人~蚊~人というように伝染していく。

シャーガス病は、知られざる“恐ろしい病気”だ。寄生虫がサシガメ(甲虫類)を媒介して人体に入り、長い潜伏期間(10年から20年)を経て発病、心臓など内臓を破壊する、という病気だ。ノルデスチなど衛生状態の悪い生活環境(サシガメの住む土壁の家とか)で発生するリスクがあり、殺菌していない食べもの(サトウキビジュース、アサイなど)から感染することもあるので、注意が必要だ。

はしか、もまた再発しているし、蚊が仲介するDengue熱、Zika熱、Chikungunha熱もノルデスチを中心に広がっているので、同地域に行く人は、防虫スプレーは必需品だ。(日本のものでも現地調達でもどちらもOK)

日  時 2019年2月6日(水)
12:00~14:00
会  場 シーボニア・メンズクラブ

千代田区内幸町2-1-4 日比谷中日ビル1F Googleマップ
<アクセス> 地下鉄「内幸町」駅下車2分、「霞ヶ関」駅下車2分