講演者:日下野 良武 氏(サンパウロ在住フリージャーナリスト、元サンパウロ新聞社専務)
演 題:ブラジル巷談ーよもやま話ー
ブラジルに移住したのが1982年であったが、今回の訪日は、80回目の日伯往復となった。本業のジャーナリストとしては、かつて10紙以上に書いていたが、現在は三紙に絞って定期寄稿している。最近はボランティア活動に注力しており、ブラジル日本語センター顧問、熊本県人会理事長として、年2回くらいのペースで訪日している。
今回は、ブラジルに住んでいる者の視点から、二つのテーマについてお話したい。その1は、ブラジルで何故日本人日系人が尊敬されているのか、であり、その2は、最近ブラジルを騒がせている汚職が何故起きるのか、の二点についてだ。
その前に、低迷していたブラジル経済が上向きになってきたことを簡単にお話しておく。年間自動車販売台数も、350万台以上(2012年)が昨年は200万台以下になってしまったが、今年は223万台と回復している。貿易黒字も史上最高となっているが、これは輸出主要産品である①大豆②鉄鉱石③肉類(鶏肉・牛肉)がいずれも好調であるからだ。
最近顕著なのが、中国からの投資も移民入国者数も凄まじいことだ。2014年訪伯した習近平主席は、2兆2千億円の投資を約束したが、最近は中国人が商業に進出しており、その象徴的な例がサンパウロの問屋街「25 de março通り」だ。かつてこの問屋街を支配していたユダヤ人アラブ人は追い出され、中国人がポ語も出来なくても構わず安価で売りまくっている。いわば狩猟民族的な商売進出だが、これと対照的なのが日本人移民で、一所懸命という言葉が表しているように一か所に定住して農耕民族的に農業現場で頑張って、子弟は都会(サンパウロ)に出して教育を受けさせてきた。この結果、農業分野ばかりや様々な社会分野で日系人が活躍することになり、その自然な結果として日本人日系人がブラジル社会で尊敬されるようになった。政界ばかりか軍(陸軍や空軍)や警察組織でも日系人がトップ層に多数入っていることも、日系人への尊敬を示している。
今年4月にオープンした「ジャパンハウス」は、ロサンジェルス、ロンドンに先駆けて竣工されたが、そのオープニング式典に、普段は三人揃うこともないテメル大統領、アルキミン州知事、ドリア市長が雁首揃え、大統領はそのスピーチで日系人の勤勉さ正直さ謙虚さを讃えていた。これも日本人日系人へのリスペクトを象徴している。
汚職の問題はなかなか複雑ではあるが、私の見方では、スペインやポルトガルが中南米を略奪し暴力的に支配したこと、ブラジルの場合は、カピタニア制という国王から委託されたカピタンが領土を支配した制度の負の遺産が続いているからだろう。親分に袖の下を渡すのも恥と思わない精神構造があるから、汚職の浄化は時間がかかるだろう。
ブラジルは何といっても食料資源が豊富で、フルーツは何でもあるし、肉もビーフもチキンも潤沢にあり、大豆や穀物類も同様であり、この強みを見越して長期的なブラジル進出を狙っているのが中国だ。
最後に、日系社会への対応について、支援⇒協力⇒連携と変わってきているが、私としては、日本文化継承の根幹をなすのが日本語教育であると考えるので、日本語センターを通じて今後とも微力を尽くしていきたい。
日 時 | 2017年11月27日(月) 12:00~14:00 |
会 場 | シーボニア・メンズクラブ
千代田区内幸町2-1-4 日比谷中日ビル1F Googleマップ |
参加費 | 会 員 3,000円、 非会員3,500円 ※当日、会場にて領収書と引き換えに、参加費を申し受けます |