講 師:  サンバ演奏家・歌手 加々美淳 氏
演 題: 「サンバの奥深さに惹かれて」

 

サンバに初めて興味を持った頃

加々美淳 氏

子供のころボッサノヴァはセルジオメンデスなどを良く聴いていた。8歳のころ初めてウィーンフィルによるウィーンナーワルツを聴いたとき、自分がそれまで知っていた3拍子ではなかったことに驚きを感じ、ヨハンシュトラウスを追いかけた。またウィーン少年合唱団に入りたい気持ちだった。それからロンドンやバークリーで色々音楽を勉強したりしたが、初めてブラジルのサンバを聴いた時、ウィーンナーワルツと同じだと思った。即ち、同じ揺れ方をしていることに大いに興味を持ちどんどんサンバに入って行った。

揺れ(groove感)について

  • サンバは確かにアフリカの影響を強く受けて入ると思う。ただ、「揺れ」というのは果たしてアフリカにあるのだろうか?アフリカのリズムが言語ならつまり村から村への伝達方法としてリズムを使っていたのならgrooveがあってはいけないのではないかと思う。
  • 例えばサンパウロとリオのサンバは若干違う。グローバリゼーションの中でだんだん特徴がなくなって行った。昔は各エスコーラ・デ・サンバで違うgroove感も持っていたが、今はだんだん一緒になっていてとても寂しいがしょうがない。更に、groove感について探っていくと、例えばポーランド出身の有名なピアニストのルービンシュタインがひくショパンは凄いと言われている。確かに聴いてみると揺れ方が違う。アメリカで、「あなたの弾くショパンはどうしてそうなんですか?」と質問したら「私の英語を聴いたら分るでしょう」と答えたらしい。つまりポーランド語なまりの英語がもたらした揺れ。揺れ方(groove感)は、言語によってもたらされる ポーランドの揺れとウィーンナーワルツの揺れとサンバの揺れは同じ。ヨーロッパの揺れ方がサンバの揺れ方と言うことは間違いないと思う。そこにアフリカの楽器が入ってきた。

リズムについて

  • 日本人はリズムが強すぎる、正確すぎると言われる。原因は日本語から来るもの。
  • 自分の名前はジュンだが、必ずブラジル人はウ、ジュンとウを付けて呼ぶ(ブラジル人のリズムをつける)。
  • 自分はいつでも音楽的にメロディー、リズムでポルトガル語を聴いているが、ポルトガル語の中にサンバの要素がたくさんあると思う。
  • ブラジル人は、身体の動きも違う。歩き方のリズムも違う。また、ブラジル人は日本式ラジオ体操ができなし、盆踊りのリズムもできない。

自分の師匠Jorginho do Pandeiro(1930-2017)について

  • 30年から40年間、師匠に学んだ。音楽に対してとても厳しい人だった。自分がサンバをギターで演奏してもなかなかサンバと認めてくれなかった。
  • ギターを弾くのではなく、サンバを弾くように言われた。曲の方からどう演奏するか指示してくる。(例モーツアルトと同じようにバッハを引いてはいけないのと同じ)
  • サンバはリズムではなく、サンバと言うのはバランソ(揺れ)なんだ。Grooveの中で弾いていたらどんなリズムもサンバだと。ギターうまくてもサンバは引けないと言われた。

 

(演奏♪♪:Sonho meu – Ivone Laraの曲)

 

言葉、ポルトガル語について

  • 日本語は子音と母音のバランスが同じ。ポルトガル語は子音と母音の変化が激しい。
  • 日本人とって音楽はどこか特別。よく生活の中に音楽があると言われるが分りずらい。言語 というのは音楽かも知れない。
  • Grooveはずっと続いて繋がっていく。メロディの中に言葉がある。

(演奏♪♪:Feitico da Vila – Noel Rosaの曲)

 

ブラジルは面白い、素晴らしい国

  • 飛行機の機内の中で騒いでいた若者たちだったが、荷物持って入ってきた老夫人に気が付くと彼女の荷物運びをごく自然に手伝っていた。そのあとまた騒ぎに戻ったが。
  • (同じキリスト教でも、米国と違ってカトリックのブラジルでは教会も自分には面白くてよく通ったもので、ある教会では)革ジャン着て鎖じゃらじゃらしている若者が教会で一生懸命お祈りをしていた。

(演奏♪♪:Não posso ficar nem mais um minuto com você…)

(サンパウロ・サンバの名曲、アドニラン・バルボーザの「Trem das Onze(11時の夜汽車)」

 

サンバとボッサノヴァの違い

  • サンバとボッサノヴァは使う音が違うのでgrooveも違ってくる。
  • アントニオ・カルロス・ジョビンは「ボッサノヴァはサンバの一つ Samba Bossa Novaが正式な呼び方」と言っている
  • ジョビンはブラジルで初めて、12音技法という無調の現代音楽を勉強した人。現代音楽の前にドビュッシー、ラベルというフランス近代音楽がある。ワグナーぐらいまでバッハの流れ(古典派音楽)。ボッサノヴァは、近代フランス音楽以降の影響を受けていて、サンバはワグナーまでということで理解できる。

サンバは音楽的にはレベルが高い。

(演奏♪♪:Meu Drama - Silas de Oliveiraの曲)

 

 

 

 

日 時 2019年10月28日(月)
12:00~14:00
会 場 シーボニア・メンズクラブ

千代田区内幸町2-1-4 日比谷中日ビル1F Googleマップ
<アクセス> 地下鉄「内幸町」駅下車2分、「霞ヶ関」駅下車2分

 参加費 会員 2,800円、 非会員 3,500円 
(当日、会場にて領収書と引き換えに、参加費を申し受けます)