会報『ブラジル特報』 2010年3月号掲載

                                    和田 亮(ブラジル日通(有) 社長)


2009年8月25日、ブラジル日本通運有限会社(ブラジル日通)は、創業30周年式典を開催いたしました。ブラジル日通は、米国日本通運を親会社として、1979年8月17日に設立されました。意外かも知れませんが、創業当初は旅行取扱を主たる業務としていたので、事務所も当時多数の日本企業が居られたサンパウロのセントロに構えました。

 設立から5年後の1984年2月に、事務所をコンゴニアス空港の近くに移転し、本格的に自社での引越業務、貨物取り扱い業務を開始。そして4年後の1988年に、Bela Vistaに建物を購入し移り、現在に至っております。

 当時は よくご存知の1980年代のブラジルの対外債務危機、90年代のバブル崩壊による日本経済長期停滞の影響を強く受けることになり、当社も同様に幾度と無く倒産の危機に面しました。しかし何とかこの危機を乗り越えてきたのですが、多数の企業が抱えている労働訴訟をブラジル日通も常に何件か抱えることになり、うち何件かは訴訟金額も多大であったことで、経営が不安定な状態に追い込まれた時期が有りました。

 さて、ブラジル日通は創業30周年といいましたが、日本通運はこの会社の設立に先駆け、さらに6年前の1973年にサンパウロに駐在員事務所を開設しています。この時期はオイル・ショックがあったものの欧米や日本からの投資が盛んに行われた時で、日本通運も各進出企業様の渡航業務代行に加え、将来的な物流ネットワークの構築チャンスととらえて進出しました。

流通業の隆盛に貢献するブラジル日通のスタッフ

 会社設立後は、将来を見据え1989年には、マナウスに事務所を開設、翌1990年にビラコポス空港にも事務所を開設、そして1991年にはリオデジャネイロ、2000年にはサントスに事務所を開設してきました。現在は2008年11月開設のクリチバ事務所を含め5つの拠点を構えております。


 さて本業の輸送業務については、母体である日本通運(株)は総合物流企業として個人の荷物から企業の大型貨物までと、その取り扱い内容は多岐にわたっていますが、このブラジル日通も同様にいろいろな貨物を取り扱っています。これまでブラジル日通が取り扱ってきた貨物のうち、主なものとしてはF1ドライバーのアイルトン・セナの遺品展示会、マナブ・マベ画伯の絵画、シカゴ交響楽団南米公演の楽器、ニューヨーク・フィルハーモニック・ブラジル公演の楽器、その他日本の放送局の資材輸送があります。

 皆様の記憶の新しいところでは、2008年2月北海道からの雪だるま、同年開催された江戸工芸展の輸送、2009年には神奈川県から神奈川県人会に寄贈された「二宮金次郎像」の輸送にも携わっています。このような特殊な貨物の取り扱いを任せて頂けるのは、皆様の日通に対する信頼にほかならないと肝に銘じ、ブラジル日通では品質維持向上のため、さまざまな取り組みを行っています。特に身近な接点となる引越業務については、常に上質なサービスが提供できるよう、親会社からは梱包技法・盗難防止等の技術指導を受けるとともに、ブラジル日通独自では、定期的に「引越説明会」を開催し、皆様に安心して頂ける「日通ブランド」の普及に努めています。


 さらに、ブラジル日本通運は、ここブラジルでも総合物流企業であるべく、民間保税倉庫会社と業務提携を結び、新たな物流商品の提供を開始いたしましたので、是非ご利用下さい。