会報『ブラジル特報』 2011年5月号掲載
日系企業シリーズ第12回

                          斉藤 隆昭(DENSO DO brASIL LtdA. 副社長)


 デンソーの南米事業の第一歩は、1975年に自動車用のアフターマーケット向けエアコン販売会社“NIPPONDENSO REFRIGERACOES LtdA”を設立し輸入販売事業からスタートしました。

 しかしながら、その後の世界的なオイルショックの影響を受けたブラジルは対外債務が膨れ上がり外貨制限により輸入が困難になってきたため、輸入販売から生産事業への移行することを決定し、エアコンの心臓部であるコンプレッサーの生産をするため1980年に“NIPPONDENSO COMPRESSORES LtdA”を設立しました。工場はパラナ州のクリチバ市に位置し、ブラジル政府と、一定の輸出を約束することにより外貨枠を獲得し生産設備、部品輸入の税控除を受けるという“BEFIEX”契約を結び、ブラジル国内販売を開始するとともにアルゼンチン、ベネズエラなどへの輸出市場を開拓していきました。

 1980年代のブラジルの自動車用エアコン市場は、装着率は1%ほどでしたが、徐々に拡大して行く中でエアコンユニット、コンデンサーといったエアコンの構成部品の生産を始め、社名を“DENSO DO brASIL LtdA”に変更、システムサプライヤーへと変貌していき、乗用車からトラック、バスなどブラジルのほぼすべての自動車メーカーと取引をさせて頂き、エアコン部門ではトップシェアーを確保するに至りました。

 その後1996年にマナウスに2輪用部品を生産する“DENSO INDUStrIAL DA AMAZONIA LtdA”を設立、さらにアルゼンチンのカーエアコン市場の拡大に対応するために、コルドバ市に“DENSO MANUFACTURING ARGENTINA S.A.”を設立してエアコン生産、1999年にはデンソーがイタリアでフィアットの電機事業部門を買収したことからブラジル事業傘下に入ってきた“DENSO MAQUINAS ROTANTES DO  brASIL LtdA”でオルタネータ、ワイパー生産、2001年にはフィアットのエアコン事業部門を買収したことからブラジル事業傘下に入ってきた“DENSO SISTEMAS  TERMICOS DO brASIL LtdA”にてエアコン生産と南米生産拠点を増強してきた結果、2010年時点で合計5社、従業員が約3000名、売り上げが約600億円ほどの規模に成長しました。

 そして2011年1月にサンパウロ州サンタバーバラ・ド・オエステ市に新工場を稼動させました。この拠点はエアコン、スタータモータ、ワイパーをはじめとし、今後ブラジルで重要性が増す安全、環境分野など幅広い製品を生産する拠点にしていきます。

サンタバーバラ・ド・オエステ新工場

 現在ブラジルの自動車市場は、年間販売台数が350万台を超える世界第4位の市場、アルゼンチンを含めると400万台を越える大市場で、今後の安定した成長が見込まれており、自動車部品としてシェアーを拡大していくためには、お客様の好み、使用環境に合った製品を現地で開発することが重要となってきます。そのために2012年中頃にサンタバーバラ・ド・オエステ新工場の敷地内に南米初となる風洞実験設備を有するテクニカルセンターを稼動させ現地開発を強化して行います。

 こうして南米5社の生産、開発、販売を強化していきますが、より効率的に進めるために南米全体を統括するための本社機能をテクニカルセンターに併設し、開発から販売まで自己完結できる体制を構築することによって競争力を強化し、この地域の自動車工業の発展に貢献して参ります。