会報『ブラジル特報』 2012年3月号掲載
日系企業シリーズ第17回
                               白崎 康人(bridgestone do brasil Ind. e Com. Ltda.社長)



ブリヂストンは1931年に創業後、積極的な海外進出により世界のあらゆる場所でお客様の要望に応えるべく、グローバルな企業活動を展開しています。タイヤでは、乗用車用、トラック・バス用、建設・鉱山車両用、産業車両用、農業機械用、航空機用、二輪自動車用、リトレッド材料・関連技術など様々な種類のタイヤを生産・販売しています。

 また、多角化製品では、コンベヤベルト、免震ゴムなどのゴム製品、分子技術を応用したウレタンや樹脂製品、高機能フィルム、自転車、ゴルフ・テニスなどのスポーツ用品を生産・販売しています。ブリヂストンブラジルの歴史は1923年まで遡ることができます。1923年に当時の当時USAの有力タイヤメーカーであったファイアストン社の販売店としてサンパウロに設立されました。そしてその後39年にサントアンドレにてブラジルでの最初の工場を設立、タイヤの生産を始めました。78年にそれまでのバイアスタイヤに代わって自動車用ラジアルタイヤの生産、83年にはトラック用ラジアルタイヤの生産を開始しました。その後88年にブリヂストンがファイアストン社を買収し、それによってブリヂストンの一員としてブリヂストンブラジルが誕生しました。

<ブリヂストン ブラジルのサントアンドレ工場>



指折りの生産規模

 サントアンドレ工場は世界のブリヂストンの中でも指折りの生産規模を誇り、現在は乗用車用、トラック用タイヤはもちろん、農業、鉱山、建設機械向けのタイヤも生産しています。操業当初は何もない場所でまさに「森」を切り拓いた様なところの工場でしたが、現在では様々な工場、住宅、商業施設に囲まれ、また工場も拡張を繰り返した結果、「杭一本」も新たに立てられない状況となっています。

 またブリヂストンブラジルにはタイヤの研究開発拠点としてSouth America Technical Center(SATC)があります。ブラジルをはじめとした南米地域に最適なタイヤを開発することを目的として1993年に設立されました。南米地域での路面やタイヤの使用状況のデータを集め分析し、高品質のタイヤを開発するために日々努力しています。98年にはより高度なタイヤ開発のため、サンパウロ州北部のサンペドロ地区にSouth America Proving Ground(SAPG)を開設しました。これはいわゆるタイヤ開発のためのサーキットコースであり、510,000㎡の敷地の中のサーキットには通常の路面はもちろん、南米の様々な路面を再現したものや、濡れた路面を再現してのテストをするための装置も備えています。

  ブリヂストンはこのようなProving Groundを世界に11か所保有しており、各地域に最適なタイヤを生産するため研究、開発を行っています。2007年にはモータリゼーションの進展による旺盛なタイヤ需要に応えるために、ブラジルでの2番目の生産拠点としてバイーア州カマサリに新工場を設立しました。新工場の敷地は1,000,000㎡の広さを誇り、最新鋭の技術により高品質の乗用車用タイヤを生産しています。新工場の生産開始により、現在ブリヂストンはブラジルの両工場において約3,300人の従業員により40,000本/日のタイヤを生産しています。

ブラジル市場は拡大
 ブラジルでは今後サッカーワールドカップやオリンピックを控え、国としての経済的な成長とともに国民所得も順調に増加して行くことが予想されています。自動車市場は年間販売台数が既に350万台を超え、自動車保有層の拡大による継続的な増加が期待されます。タイヤ市場におきましても保有台数の増加によるマーケット拡大が期待されます。相次ぐ新工場建設を予定している競合他社や、他地域からの安価な輸入品と切磋琢磨しながら、最高の品質で自動車業界の発展に貢献して参ります。