会報『ブラジル特報』 2013年5月号掲載
特集 日本ブラジル中央協会創立80周年記念シンポジウム
◇プレゼンテーション Ⅱ

                                   筒井 隆司   


 
ブラジル駐在の1年目、年末年始に日本に戻るより、お客と話をしようとブラジル中を回った。そんな中でキーワードがわかった。中間所得層の拡大、クレジットカードの普及、5,000万人のネット利用、ゲーム環境の浸透、パーティー好きなどだ。もちろんサッカー命の国民性ははっきりしており、ブラジル代表のカカ選手をPRに使ってみた。

 賃金上昇や就業機会の拡大も顕著だった。ブラジルの世帯平均収入は2000年の740ドルから10年は1,860ドルに増えたという。大きな消費が期待できるはずだが、ブラジルの消費者は一言では括れない。
 台頭する中間層のCクラスをどう攻略するか。Cクラスの中でも職業が安定している人、所得の多い人、とりわけ軍人、医者、教職者など「制服を着た人」に狙いを定めて販売戦略を考えた。安さで勝負する韓国との消耗戦を避け、消費者から直接つかんだ潜在需要を商品化し「いいものを高く売る」ことにした。ネットプロモーションも強化し、お客にUチューブでソニーはいいよ、といわせた。

 ソニー・ブラジルは1972年に設立、従業員はひところの2,000人から3,000人の会社になった。取り扱い商品は93種類に及ぶ。大変苦しい時期もあったが、2011年度は単独決算で1,200億円、09年度比で赤字から利益率5%になった。液晶TVも黒字転換。デジタルカメラの販売は09年度の60万台から200万台に伸びた。現地化とグループ経営を強化した結果だが、これからは再投資と人づくりを経営の主題としていきたい。

 ブラジルには多くの日本企業が進出しており、新日鉄やホンダなどの成功例がある。これから進出する企業はそうした先輩企業からヒントを得たらいいと思う。

海外職業訓練センター(OVTA)
国際アドバイザー、元味の素ラテ
ンアメリカ本部長。ブラジル、ペル
ーなど海外駐在通算26