講 師:小貫 大輔 東海大学教授
演 題:「在日ブラジル人子弟の教育問題~オルタナティブ教育やオンライン講座の試み」
(初めに)
- 日本ブラジル中央協会はブラジルに長く住みブラジルが大好きな人が集まっていて、ブラジルに対して何か恩返ししたいと思っている方が多いと伺っている。本日の会が、ブラジル人に対してどういうことができるか一緒に考える機会になればと思っている。
(自分とブラジルとの繋がり)
- 本を出てハワイに行き大学院卒業後、20年間、ブラジル、日本に行ったり来たりして現在は東海大学の国際学科で教えている。ブラジルは若くて色んな人が住んでいて一人一人自分らしく生きていける国として魅力がある。学生たちは、授業を通じてブラジル人に興味を持ちブラジル人に接したいと思っているので、学生達をブラジル人ぽくするのが自分の仕事だと思っている。そのためにポルトガル語を覚える前に、まずは人の懐に飛び込んでまずはキス(ベイジーニョ)をしなさいと言っている。
- もともと大学・大学院を通じて性教育の研究をしていたことがきっかけでブラジルに行き、エイズ予防研究、JICAの助産師を育成するプロジェクトにも参画。
- 27歳でブラジルに行き1988年から1993年の5年間、モンチアズールのファヴェーラのCommunity協会でボランティア活動をした。その際、最大の友人であり恩師であるドイツ人女性のシュタイナー教育者のUteさんと出会った。ここでの原体験が(後述)今日の活動に繋がっている。
(東海大学教養学部国際学科とブラジルとの繋がり)
- 学生サークル ”Beija Me Liga” (私にキスして電話して):日本に住んでいるブラジル人の子供たちと交流している。主な活動として、年に数回、東海大学湘南キャンパスに2泊3日で泊まり込み、学習支援ではなく、ただひたすら遊ぶというMulti Culture Camp と称するイベントを開催している。今年は8/23-8/25開催予定。
- ユネスコユースセミナー:対象を高校生に絞って、現代的なテーマを決めて学習するということで、東海大学湘南キャンパスの教室に布団を敷いて1泊2日のセミナーを実施している。2015年以降5回開催(ブラジル人以外に中東系、中国、韓国朝鮮系の高校生も参加。今年は、11/16-17開催予定)。昨年は、シュタイナー教育をベースにしてブラジルのスラムで活動されているUteさんを80歳の誕生日のタイミングで日本に招いて、御殿場会場、身延山にて5日間に亙って「社会インセンティブ・フォーラム」開催した(高校もたくさん参加)。今年の社会インセンティブ・フォーラム」は、12/12-15でエジプトで開催予定。
(日本在住ブラジル人に教員資格を取らせるプロジェクト)
(背景)ブラジル政府として公立学校には支援できるが私立である日本のブラジル学校には直接支援はできないが、学校の地位を高めることは可能。地位を高めるためにブラジル政府ができることは日本のブラジル学校が本国と同等の学校であると認証すること。そのために教員養成が必要、さらには養成講座も必要。
→2009年にブラジル政府から3億円、三井物産が1300万円拠出して、在日ブラジル人向けオンライン教育養成講座を無料開講。ブラジルの大学がネットで授業を行い、東海大学は日本でのスクーリング授業に協力。同プロジェクトへの大学としてのサポートについては、自分にはファヴェーラのCommunity協会(保育園)でのボランティア活動していた当時の原体験があり、当事者(ブラジル学校)が自分たちのためにやっていることが本物だと信じていた。
(5月18日神奈川あすフェスタフォーラム:多文化共生のこれまでと未来へのとびら)
神奈川県は国際的なことについて先進的取り組み(在日の方々の権利獲得運動ほか)を色々やってきたが、それが、現在ぼろぼろと崩れている。外国籍の方々に対して様々な配慮の行政がなされてきた(例:外国人会議開催)が、配慮だけでは獲得した権利、知事が革新系から保守系に変わると消滅してしまう。法律制度を変える必要がある。
(教育機会確保法)シュタイナー学校で変わった教育をしていても普通の教育として認められるようになった。規制緩和で小泉首相もサポートしてくれた。不登校子供たちのための学校、フリースクール、オータナティブ校も学校としても認められるようになった。
(日本語教育推進基本法案)
日本語を母国語としない外国から来た子供たちのための日本語教育の支援。但し、日本語教育も重要だが、外国人児童の場合、家庭で使用される母語をないがしろにしてはいけないという点も配慮。
(ブラジル人=初めて確証もなく日本人でない人がたくさん移住してきた人たち)
ブラジル以外の外国人は職業にリンクしたビザで日本に在住しているが、ブラジル人は正式な移住者で、職業にリンクしない生活者である。ただ、日本への移住30年も経過しているのにその人たちのために何もサポートできていないし、新しい社会造りもできなかった。多様で自分が自分らしく生きることができるトレードマークとしているブラジルは、日本人に欠けているものを教えてくれる。ブラジル大使館が子供向けに作った冊子には、「ブラジルは外国人を迎えるのが大好きな国と世界中の人々から知られている」と書かれている。日本に住んでいる人が日本のことを大好きになるような仕組みが必要。その仕組みを作るためブラジル人との関わりから始めることに意味があると考えている。一緒にできることがあれば考えていきたい。
(Q&A)
Q:日本語教育推進法で対象としてブラジル学校は入っているか?
A:ブラジル人学校でも40校程は、各種学校に認定されているため。対象に入るが、大部分は各種学校としても無認可なので対象にならない。
Q: 在日ブラジル人向けオンライン教員養成講座の卒業生205名のその後はどうなったか? 次のスクーリングは?
A:2割は本国に帰国。2割は工場勤務。過半数が教育に関わっている。5-6名は大学院で博士課程。ブラジル政府として次のスクーリングは継続できていない。一方、ブラジルではオンライン講座が盛り上がっている。去年、日本とブラジルの学生が一緒に勉強する先駆的なOnline Specialization多文化研究コースが実験的に3か月実施された(3000万円の政府予算が付いた)。ブラジル政府も今後の継続は認めているが予算はついていない。
日 時 | 2019年5月20日(月) 14:00~15:30(13:30受付開始) |
会 場 | IDB米州開発銀行アジア事務所会議室(内幸町 富国生命ビル16階)
アクセスマップ |
参加費 | 無料 |
お申込み | 下記フォームからお申し込みください |
お問い合わせ | 日本ブラジル中央協会 事務局 info@nipo-brasil.org |