講 師: 筑波大学 生物資源科学専攻 花田賢二氏
演 題:「ブラジル・セラードの大規模天水大豆農業における降雨条件の影響」
(1)研究目的
・セラードの天水畑大豆農業において、降雨(天水)が経営の安定性に与えている影響を明らかにすること。
(2)研究に至った背景
・セラード大豆作が大規模経営であり、雨期の天水に頼った農業による不安定なこと。
・大豆産地開発は南部、中部、北東部へ(降雨の多い地域から少ない地域へ)移動して向かっていること。
(一方、セラードの中で苦労して雨の少ない地域を開発せずとも、セラードに隣接した雨の多い アマゾン地域において、乾期に伐採、焼き払い、農業を始めるという動きがここ数年加速しているように思われる。セラード内での農業の充実、強化は、昨今のアマゾン乱開発に関わる違法伐採・火災問題に歯止めをかけることにも繋がる)。
・大豆作への天水影響についての既往研究が殆どないこと。
(3)研究の構成
・最大耕作可能面積(S max)と必要経営面積(S min)を比較することで農家の経営状態をみる。
・播種・収穫と単収についての降雨の影響について聞き取り調査実施。
(4)研究の方法
・播種可能面積(ha)の算出→播種可能期間(日数) × 作業効率(ha/台・日)×農業器械台数
上記算出のために、雨期の開始時期、作業不可日数、圃場、作業方法、機械効率について、現地聞き取りを行った。調査農場は降雨量の異なる2地区を選定。作付規模の異なる5農場で比較分析。
(5)研究の結果と考察(まとめ)
・大豆の播種可能面積:MT州 900-1100 há/台
・雨期の開始時期により播種可能期間が制約されている。
・降雨(天水)の制約により、既に経営が制約を受けている地域がある(BA州)。
→雨に頼らず安価な灌漑導入の必要性
(6) セラード 現地訪問略歴
2017/4、 2017/11、 2018/11、 2019/1、 2019/7 計 約70日間
(Q&A)
Q: 不耕起栽培と換金作物の栽培について
A:現状、乾期には土地の乾燥と高温化防止のためカバークロップとして牧草(Brachiaria)が植えられているが、現地の古い農民は、不耕起栽培はBrachiariaと同じぐらい重要だとしている。
A:換金作物については400ha-500ha規模の農場では、60%は大豆、40%はニンニク、玉ねぎ、にんじんなどの換金作物を作っている。
Q:単収はどうか?
A:10年とか10年以上の期間で見ていなければならないが、雨の多いMT州では3.2トン/ha、
BA州で2.8-3.0トン/ha。2018年は両州とも高く4.0トン/ha近い単収であった。
日 時 | 2019年10月25日(金) 14:00~15:00 |
会 場 | 米州開発銀行アジア事務所会議室
住 所:千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル16階 JR山手線・京浜東北線・東海道本線「新橋」駅 日比谷口・・徒歩6分 |
参加費 | 無料 |