MOTTAINAIキャンペーン10周年を記念して、
ブラジル元環境相 マリナ・シルバさんをお招きしてシンポジウムが開催されました。

■シルバさん講演要旨

私たちは深刻な五つの危機に直面している。ギリシャやブラジルなど多くの国の経済危機。20億人以上が1日2ドル以下で生活している社会的危機。そして環境危機。地球の平均気温の上昇を2度以下に抑えないと深刻な問題に直面する。欧州やアラブ諸国などの政治的危機もある。
エコロジーと経済は相反するようにみられるが、これは価値観の危機だ。風力や太陽光発電が可能でも、優先順位は高くない。(経済優先によって)次世代のための自然が破壊されている。それは倫理的な問題だといえる。
人類はもともと「どうあるべきか」という理想で生きてきたが、工業化により、「こういうモノが欲しい」に変わってきた。無制限にモノを持てると、幸せや豊かさを感じる。だが、地球は私たちに「(資源は)有限だ」といっている。
アマゾンでは違法伐採で、27万平方キロに及ぶ被害があったが、犯罪者の摘発や材木の没収などの取り組みで、過去10年で森林伐採率を8割引き下げることができた。ただし現在はいくつかの後退が見られる。
国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では、すべての先進国、途上国が二酸化炭素(CO2)排出量削減に明確な目標を立てるべきだ。途上国が先進国の過ちを繰り返さず変わっていけるように、先進国は途上国を支援していく必要もある。
私はアマゾンの森林の中で半ば奴隷的な生活をおくり、16歳までは字も読めなかった。マラリアには5回かかり、14歳の時に母が亡くなった。私の過去は温かいものではなかった。しかしサルトルの名言のように「過去の捕虜」ではない。
東日本大震災の大津波の被害にあった人たちに昨日お会いした。彼女たちは過去を引きずるのではなくて、その苦難を力として何かよいことをしようと考えていた。
故ワンガリ・マータイさんが使う「MOTTAINAI」という言葉は短いが多くの意味を含んでいる。資源はなるべく少なく使い、リユース、リサイクルすることによって、自然や資源、次の世代をリスペクト(尊敬)するということだ。
この言葉は、持続可能な開発モデルを描いていくことに通じる。社会、文化、経済がだんだん変わり、人々が幸せを感じるような新たな消費のあり方、文明のあり方を創造していくということだ。
アフリカには「私たちはこの土地を子供たち、孫のために資産として残すのではない。土地を子供たち、孫から借りているのだ」という言葉がある。彼らに借りたものをさらによくし、あるいは同じ状況で返すことができたら素晴らしい。新しい持続可能な開発モデルを創っていくこと。それが今、ブラジルでチャレンジし、世界中に訴えたい言葉だ。経済、社会、環境、政治、倫理、道徳、さらに美学的にもだ。ありがとうございました。

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マリナ・シルバ【マリナ・シルバさん】
1958年2月アクレ州生まれ。57歳。ゴム農園労働者の家庭に生まれる。16歳から家政婦をしながら学校に通い、苦学の末、連邦大学を卒業。労働党に入党後、リオ・ブランコ市会議員、アクレ州議会議員を歴任後、94年にはブラジル史上最年少の上院議員となる。

 

 

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