2019年7月20日

I ついに動き出したブラジル国会

 

  1. ボルソナーロ新政権が1月初めにスタートしてから最初の100日が経過した時点での状況は景気はじりじりと後退しているのに政府は財政再建のための年金制度改革や税制改革の旗印を掲げただけで短期の景気浮上策も打たず何もしないと評判は悪かった。ボルソナーロ政権に対する世論調査の支持率も32%と歴代の中で最低だった。
    国会ではボルソナーロ政権を支える安定的連立与党基盤も出来ていないので年金改革等の大型構造改革はとても通らないだろうとの見方もあった。現に5か月間、年金改革法案は動かなかった。
  2. ところが6月に入ると年金改革法案(憲法の一部を修正する法案PEC)は、まず下院の憲法司法委員会にかけられ23日に承認・通過の後、特別委員会にかけられ、ここで本会議への付議が28日承認された。本会議での審議が開始され、7月10日深夜に第1回投票が行われた。
    第1回投票の結果は賛成379票(下院議席数513の60%超の308票が憲法修正案承認の最低得票数でこれを大幅に超えた)反対131票だった。労働者党PT以下左の6党が党議で反対を決めていたが脱落者が多数出た模様。
  3. 国会が予想以上に早く動き出したのは経済相パウロ・ゲーデスの熱い説得と息子達のために年金改革は不可欠であり、是非実現したいと前政権時代に下院議長に就任した時に言っていたロドリーゴ・マイア下院議長(民主運動DEM)が、かなり各党に根回しをしたことが奏功した模様。本会議での法案説明役を引き受けたブラジル社会民主党PSDBや民府運動DEMなどかつての大政党が賛成に回ったことが大きい。
    この動きがボルソナーロ政権の安定的支持基盤形成に繋がると良いのだが。
  4. 下院第2回投票は7月18日に休会に入った国会の休会明けの8月6日以降の予定。その後法案は上院に回され憲法司法委員会に付議の後、本会議の2回の投票にかけられる。タッソ・ジェレイサッチ上院議員(PSDB)筋の話では、上院で州と市の公務員の年金改革も含める意向の由。 州や市の年金基金はかなりの基金が資金運用で大赤字を出しているようで根本的解決は大変だろう。

 

II セルジオ・モーロ司法大臣がらみのスキャンダル

 

  1. サンパウロの友人から“モーロ大臣がスキャンダルに巻き込まれ、下手をすると辞任に追い込いこまれ、ボルソナーロ政権もガタガタになりかねない”と言うとんでもないニュースが飛び込んで来た。政界の腐敗汚職一掃を指揮したモーロ大臣が汚職に巻き込まれるなんて考えられないと思っていたら ハッカーがモーロ判事が検事総長に電話で2018年の大統領選に犯罪者のルーラ元大統領が出るのは問題だと言ったのを暴露したものと判った。判事が政治につき発言したのが問題と騒いだ筋がいたようだ(6月10日時点の話)。
  2. 国会の上院の憲法司法委員会でモーロ司法大臣は“ルーラ元大統領は国家に対して重大な罪を犯した犯罪者であり誰が彼を釈放したいのか。加えて国家の情報を外部に渡すのは重大な犯罪だ!”と議員たちに一喝して本件は閉幕となった。
  3. 経済の状況
    1)景気は引き続き後退状況で消費、投資、雇用などいずれも低調。ただし為替レートは  市場の年金改革成立期待からレアル高方向へ堅調に推移(政権100日後の4月初めには1ドル4レアルまで行ってたのが7月中~下旬には3.7台から3.6レアル台に戻るところまできている(国会で今後法案が難行すればまたレアル安方向へ揺れる)。今年の成長率はは1~3月期がゼロ成長だったこともあり年間プラス0.8%レベルの予測が現時点では太宗。これは年金改革成立後の経済の動きが読みにくいのでプラス要因は入れてないためと思われる。2)国営企業の民営化が近々始まりそうだ。大手の連邦貯蓄銀行(CEF)やペトロブラスの名はまだ出てないがブラジル銀行(BB)については、3月にルーベン・ノバエス総裁が民営化はいずれ行われるだろうとの発言をしている。 もう一つ、5月に従来ブラジル銀行経由行われていたブラジル政府の日本在住者への年金の送金業務がからBBがはずされ他の外銀に移された。米国在住者への送金業務もBBから外された由。これはBB民営化のための準備と思われる。年金改革成立後民営化も次々に動き出すのではないか。

 

すずきたかのり
(ビジネスアドバイザー, 元ブラジル東京銀行頭取 元デロイト・トーマツ最高顧問、元新東工業顧問、1966~67年ブラジル国立バイーア大学経済学部研修R・アルメイダ教授に師事、サンパウロ州工業連盟外資支援委員Fiesp、TS経済ビジネスフォーラム創設者(サンパウロ・主宰者シゲアキ・ウエキ元大臣)、ブラジル經濟関係著書日本経済新聞刊ほか、ブラジル・サルバドール市名誉市民、ブラジル大統領より南十字勲章叙勲)