会報『ブラジル特報』 2013年5月号掲載
特集 日本ブラジル中央協会創立80周年記念シンポジウム
◇プレゼンテーション Ⅳ

                                   岡田 茂男   


 

ブラジル人はラテン系で情に厚い。論理的ではなく感情的だ。建前ではなく本音の世界。どこか関西人に似ている。

 日本人には理解しがたいことがよくある。カネを借りる時も「貸してもらう」ではなく「借りてやる」という姿勢がブラジル流だ。金利を払っているのだから堂々と借りてやるという姿勢だ。

 それから「沈黙は金、雄弁は銀」という日本流は忘れ、交渉はダメ元精神でいきたい。ブラジルやアメリカなど移民の国では黙っていては相手に意思が伝わらない。そして簡単に謝らない。謝った瞬間に負ける。

 ブラジルの人件費は高いと思ったほうがいい。社会保障、13カ月分給与、有給休暇、年金積み立てを合算すると実際に払う人件費は2倍近くなる。

ダイキン工業顧問。
元ブラジル三井物産社長、
4度のブラジル駐在経験



 こんな国で社長が務まれば、世界のどこへ行っても社長が務まる。ブラジルGMの社長だったワゴナー氏は本社の社長になったし、ブラジル・ミシュランの社長だったカルロス・ゴーン氏も日産ルノーの社長になった。

 そのほか経営上の留意点をあげると、変化の激しい国なので良い意味で「朝令暮改」をしたらいいと思う。一度決めたら変えないということではなく、間違いに気付いたら直ちに方向転換することだ。

 また突然の政策変更がある国なので、経営者としてそれを予見できるように日常生活で感度を磨いておくことも大切だ。ブラジルは世界の淡水の20%を握っている。限りない将来がある国だと思う。