2011年、ブラジルはGDPで英国を抜いて世界第6位になった。一人当たり国民所得は12,000ドルを超えた。その巨大な国内市場は大きな内需を生み、ブラジル経済を支えている。それには2つの政権が決定的な役割を果たした。まずカルドーゾ政権(1995~2002年)は「レアル・プラン」によりハイパーインフレを収束し、国民の購買力を一気に30%引き上げた。加えて大型民営化を実現し、市場の裾野を拡大した。次のルーラ政権(2003~10年)は「飢餓ゼロ計画」を最重要政策として打ちだした。
ルーラ政権は2つの具体策を実施した。ひとつは最低賃金の実質引き上げだ。2003~12年の10年間で実質86%アップした。もうひとつはボルサ・ファミリアと呼ばれる貧困層への生活費補助。家族1人当たり月収70レアル未満の家族が対象で、貧困層を中心に1,350万世帯6,500万人が受給した。
カルドーゾ、ルーラ両政権の施策により、ブラジルの貧困層4,000万人の所得が上がった。最低賃金の実質アップはジルマ・ルセフ大統領により2011年に「前年のインフレ率プラス前々年の経済成長率」とするよう法制化された。
この最低賃金の実質アップは公務員の給与、年金、さらに民間の給与に波及、国民の半数を超える1億人超の新中間所得層Cクラスを出現させた。この新たな消費需要の波は地方にも及んでいる。併せて雇用も好転している。2003年の失業率は13%だったのが12年には5.5%まで低下した。
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元ブラジル東京銀行会長、元デロイ ト・トウシュ・ーマツ最高顧問。 『2020年のブラジル経済』(日本経済 新聞出版社 2010年)等著書多数。 |